食品中のさまざまな機能を持つ成分に注目してみよう!

食品中のさまざまな機能を持つ成分に注目してみよう!

ゴーヤの苦みの正体は?

食品として摂取している生き物は、人間に食べられるためではなく、自然界で自分たちの子孫を残すために存在しています。そのため、ほかの生き物から身を守る策を講じます。生きていくために必須なアミノ酸、糖、脂質、核酸などを一次代謝産物と呼ぶのに対し、必須ではないですが身を守ったり情報を伝えたりするために作るものを二次代謝産物と呼びます。例えばメロンはカビに対抗して「クルルビタシン」という二次代謝産物を作りますが、これはゴーヤやキュウリにも含まれる苦味物質の仲間で、細胞骨格に作用して細胞が増えるのを抑えます。

亜鉛の効能

亜鉛は欠乏しても、過剰でも困る必須微量金属元素で、欠乏すると成長障がいが見られたり、免疫機能が落ちたりします。実際、妊娠マウスに亜鉛不足の餌をあたえると、明らかに胎児の成長が遅れます。また生体には300種類以上の亜鉛を含む酵素があって、重要な働きをしています。無理なダイエットなどで亜鉛不足になると味覚障がいが起こります。現在の日本は飽食のようで、実は潜在的に亜鉛不足の可能性があります。特に高齢者では亜鉛不足の人の割合が高く、褥瘡(じょくそう)がひどく、殆ど食べられなくなった高齢者に亜鉛を投与したところ、食欲が回復し劇的に元気になったケースもあります。亜鉛は牡蠣や肉などに多く含まれますが、摂取した分がすべて吸収されません。例えば小麦に含まれるフィチン酸は亜鉛を包んで吸収しにくくします。そのため、一緒に食べるものも重要です。なお、亜鉛の吸収・輸送・排泄にはトランスポーターという、細胞に存在する装置が重要な働きをしていて、例えば母乳中に亜鉛を送れないと、新生児は亜鉛不足になってしまいます。

食べ物=栄養素ではない!?

食品にはいろいろな機能を持つ成分が含まれており、単なる栄養素というわけではありません。食品のもとになっているものは、もともと人間のために存在するわけではないからです。そして、その機能を知ることで効果的に利用することができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都大学 農学部(生命科学研究科)  教授 永尾 雅哉 先生

京都大学 農学部(生命科学研究科) 教授 永尾 雅哉 先生

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生命科学、食品生化学、細胞分子生物学

メッセージ

何のために勉強するか? それは自分が興味を持ったことに「夢」を持ち、夢を実現していくのに必要だからと思います。大学では「自分が何を楽しんで人生を過ごすか」を真剣に考えることが大切です。いろいろと勉強しておいたことが役立ちます。本当に「楽しい」のは「目標」が「達成」された時です。さて、生物は何かを食べなければ生きていけません。食品の持つさまざまな機能や、生きていくための仕組みについて研究することを一緒に楽しんでくれるあなたが、「夢」を求めて来てくれるのをお待ちしています。楽しみましょう。

京都大学に関心を持ったあなたは

京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。