電波で読み解く宇宙の誕生の秘密

星が生まれる場所を探る
宇宙には、ガスが集まった「分子雲」という領域があります。その中には、分子コアと呼ばれる小さくて密度の高いガスの固まりがあり、これが重力によって収縮することで星が誕生します。誕生した星には、重いものもあれば、軽いものもあります。そうした違いがいつ・どのように決まるのかは、まだ解明されていません。そこで、はくちょう座にある分子雲を観測し、星になる前の分子コアの質量を調べる研究が行われました。その結果、まだガスの状態である分子コアの質量分布が、実際に誕生した星の質量分布とほぼ一致していることがわかったのです。つまり、星は生まれる前から、ある程度は将来の姿が決まっている可能性が見えてきました。
見えないものを見る望遠鏡
こうした星の様子を調べるには、普通の望遠鏡では見えないものを見るために、宇宙から届く電波をとらえて観測する電波望遠鏡を使います。近年では、ミリ波やサブミリ波と呼ばれる、ごく短い波長の電波まで観測できるようになりました。これらの電波は、光を出さない極低温のガスやちりといった、星の材料となる物質から放射されています。南米チリのアルマ望遠鏡は、世界最大級の電波望遠鏡の一つで、日本が開発した高性能な受信機も使われています。近年の電波望遠鏡による観測では、広い視野、そして高解像度の膨大なデータが得られるため、さまざまな天体をより詳しく調べることができるようになりました。
観測だけでなく機器開発も
星の誕生を追いかける研究には、観測装置をつくる技術も欠かせません。特に、ミリ波やサブミリ波のような高周波かつ高感度な電磁波観測に必要な技術は、一般的な産業で扱われないため、研究者自らが装置を開発します。例えば、望遠鏡で集めた電波を検出する受信機には、超伝導という特殊な技術が使われており、それを動かすには受信機を極低温に保つ技術も求められます。こうした装置開発は、一見遠回りのように思えるかもしれませんが、宇宙の謎に迫るためには、欠かせない大切なプロセスなのです。
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北見工業大学 工学部 地域未来デザインコース 情報デザイン・コミュニケーション工学コース 准教授 竹腰 達哉 先生
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