海洋エネルギーの普及のカギとなる地域の理解
日本の海洋エネルギー
447万平方キロメートルと、世界で6番目に広い排他的経済水域を有する日本では、これから海洋エネルギーが成長産業になるだろうと考えられています。エネルギー源は、風力や波力、潮力などです。このうち浮体式の洋上風力発電は現在急ピッチで開発が進められています。福岡県では九州大学、長崎県では環境省、福島県では経済産業省のプロジェクトが進行中です。
2012年には、国内に波力と潮力の公的な実証実験場を整備することが決定しました。実証実験場は実用化に必須の施設です。
実用化までの課題
しかし、実証実験場を整備するには大きな問題があります。海洋の利用は産業や交通、国防の問題などがからみます。欧米では「海洋空間計画(MSP)」という考え方が重視されていて、各国の国策に組み込まれています。これは、資源保護を含め、利害関係者たちが相互理解し、連携して総合的に海域を管理、利用しようとする考え方です。しかし、日本ではまだこのような総合的な計画は考えられていません。
一歩ずつ地域の理解を得る努力が重要
さらに大きな問題は、その地域が実験場を受け入れるかどうかです。特に漁業者は、実験場ができると漁業に支障が出て漁獲高が減るのではないかという心配を抱きがちです。これは日本に限らず世界共通の問題で、海洋エネルギー先進国であるイギリスでも事情は同じです。解決には地道に話し合いながら理解と協力を得ていくことしかありません。その際、海洋エネルギーを地域づくりと結びつけ、地域住民自身が住みたい地域の実現と、海洋エネルギーなどの再生可能エネルギーの利用を組み合わせることが大切です。
海洋エネルギーの普及には、技術開発と同時に、こうしたソフト面での課題を乗り越えることが重要です。そのためには、地元の漁協や自治会など、多くの団体と話し合い、利害を調整しながら少しずつ前進していく努力が欠かせません。
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