私だけのオススメ本に出会える? 感情による小説検索システムの開発
一人ひとり違う感情から小説を検索する
図書館で本を探す時、著者名・書名・キーワードなどの客観的な情報で検索するでしょう。では、「元気が出る小説」や「泣ける小説を読みたい」と思った時は、どうすればいいでしょうか? 「元気が出る」「泣ける」といった感情は、人それぞれに違うものです。仮に、同じ本を読み、同じ感情が湧いても、それを同じ言葉で表現できるとは限りません。一人ひとりの「感情」という主観的な情報を手がかりに、小説検索をするシステムの設計開発の研究が進んでいます。
性格と認知が、読後の感情をつくる?
感情に個人差が出る要因のひとつとして考えられるのが、「性格」です。大学生111名の性格を測定し、小説4作品を読んでもらい、どのような感情や興味を持ったかを調査しました。すると、協調性や共感性が高い性格の人ほど、ある小説で主人公に対する同情や理解が強まり、敵意が弱まるという結果が出ました。また、ラブホテルを場面としたコメディ小説を大半が「面白い」と感じたのに、良識の高いまじめな性格の人は「つまらない」と評価しました。考慮しなければならないのは、小説を読んだ時に、物語の展開を理解し、登場人物の感情を推論し、共感や違和感を抱くという「認知」のメカニズムが影響していることです。これらから、読者の性格と、物語・登場人物への認知的な評価や興味には関係性があり、そこから感情が形成されると考えられるのです。
主観的な情報から、神秘的な人間の心を発見!
インターネット上では、小説に「悲しい」「楽しい」などのタグをつけて、集合知として利用されています。しかし、小説を読んだ後の感情は、読者の性格、内容の理解度、気分、嗜好、初読か再読かなどで左右されます。そのように複雑な人間の心を、どこまで測定できるか、どう活用するかには、多くの課題があります。しかし、この研究は主観的な「感情」という情報の分析に挑戦することで、神秘的な人間の嗜好性や心の関係性を発見できるロマンにあふれた分野なのです。
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愛知淑徳大学 人間情報学部 人間情報学科 教授 三和 義秀 先生
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