会話から読み解く「ポリティクス」
混沌とした世界情勢に目を向ける
平和な日本に住んでいると、社会情勢が不安定な中東や東南アジアのポリティクスに目を向けることは簡単ではありません。しかし知りうる手段はたくさんあります。その一つが、世界の社会情勢が映し出されたドキュメンタリーや映画などの映像から会話を聞き取り、内容を分析することです。特にイスラム社会では、言語活動と国の政治活動が強く関わりあい、その背景に潜む問題点がとても根深いことがわかってきます。
生き方を自由に選べない世界がある
パキスタンに住む、当時14歳の少女、マララ・ユスフザイさんがイスラム武装勢力組織「パキスタンのタリバン運動」を批判したとして銃撃されたのは、2012年10月のことでした。彼女は自らの教育を受ける権利を主張したのですが、そんな少女が標的になるのは理不尽ですが、これは現実です。教育は女性を反抗的にさせる、という理由から女性に教育を受けさせることを禁じたり、女性の就労を限定したりする国はたくさんあるのです。男女間だけではなく、信仰する宗教や身分の違いによって、自由に生きる権利すら得られない人々が大勢いることも事実です。
会話に潜むジェンダーを問う
パレスチナ自治区の検問所を通る、パレスチナ人女性にジョークを言うイスラエル軍の男性兵士の映像の会話を聞くと、ジョークに隠された侮蔑と女性の恐怖が明らかになってきました。会話を聞き取る際、特に注目するのが付加疑問文です。「~ですね?」と相手に念を押したり確認したりする表現で、語尾を上げれば質問の意味合いですが、下げたときは、言い方によっては高圧的に相手の同意を強く求める言い方へと変化します。男女間に見られるこのような会話の特徴から、イスラム社会が抱えるジェンダーが透けて見えます。こうした日常に根付く問題を国際社会の中で取り上げることが、今、強く求められています。
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