ラクダが海を渡る! 自然に依存した紅海沿岸砂漠の暮らし
ラクダが舟代わり
ラクダがサンゴ礁の島をめざして海を渡る、そんな光景を信じられますか?
アフリカ・スーダンの北東部、紅海沿岸の砂漠に牧畜をしながら暮らしている人々がいます。この辺りの海にはサンゴ礁があり、ラクダのえさとなるマングローブが群生しています。ラクダは人間の足では痛くてとても歩けないサンゴ礁も、最深部が2メートルある海水も平気です。彼らはラクダを舟代わりにして海を渡り、マングローブの葉を刈り取り、魚介類を漁獲します。
自然への依存が抑制力に
ラクダに依存することで、人々は過酷な自然条件下で生活できています。ラクダが海を渡れるのは、辺りの地形や潮位、潮流などを熟知した現地に暮らす人々の経験があればこそですが、それでもときには潮に流されたり、砂泥質の底に足を取られたりと、危険がともなうので、行動は慎重になります。
しかし、このことが、結果的に資源の乱獲を制限していると言えます。自然に寄り添った暮らしが、資源を無制限に獲ることを防いでいるのです。
石油に依存する今
中東では、ラクダのミルクもよく飲まれます。ラクダは腎臓の機能が発達していて、少しなら海水を飲むことができます。つまりラクダを介して海水がミルクになっているわけで、ラクダは「天然の海水淡水化プラント」なのです。海水を真水にするプラント技術は日本の得意分野ですが、膨大なエネルギーが必要なため、中東では火力発電所に併設されています。この最先端技術のエッセンスが、じつはラクダの体の中にあるのです。
私たちは石油に依存して暮らしていますが、もし将来石油がなくなったらどうなるでしょう。ある石油産出国の首長は「私の父はラクダに乗っていた。私はベンツを運転し、息子はジェット機を飛ばす。しかしひ孫はまたラクダに乗っているだろう」と言ったといいます。昔から人間は、人力や家畜の力、水力、風力といった再生可能エネルギーを活用してきました。それにもう一度光を当て、見直すことが、これからの社会には必要なのです。
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