「電気の地産地消」が環境問題の切り札になる
最小限の環境負荷で「電気のある暮らし」を維持
現代社会は、もはや電気エネルギーなしでは成り立ちません。しかし、「脱原発」の気運は高まっており、さらに我が国の総発電量の半分以上を担う火力発電は、環境保全の観点からこれ以上増やしにくく、化石燃料もいずれは枯渇します。これからの時代に必要なのは、最小限の環境負荷で生産した電気を無駄なく消費し、余ったエネルギーは蓄えておけるシステムづくりです。
それを実現するため、発電・送電・蓄電・消費の各段階を、最適制御する技術を開発することが、「電気エネルギー学」のテーマです。
余った電気を蓄えておけば電気の無駄も最小限に
電気の流れを最適化する上で、最大の問題は、発電量と消費量とのミスマッチです。電気供給量が消費量を下回れば、停電などさまざまな障害が発生しますから、発電する側は常に、消費量より少し多めの発電機器を用意しなければなりません。「少し多め」の積み重ねが、大きな無駄になるわけです。この問題を解決するために注目されているのが、電気自動車など「蓄電」できるデバイス(装置)です。電気の消費量が少ない時間帯、電気自動車などに電気を蓄えておき、その電気を優先的に使うシステムがあれば、発電する側も無駄のないエネルギー生産ができるようになります。
「電気の地産地消」を実現するスマートグリッド
近年、メディアで「スマートグリッド」「スマートコミュニティ」という言葉が取り上げられていますが、これは、消費地域内にある太陽光発電システムと電気自動車などとを組み合わせ、「作る」「蓄える」「消費する」という電気の流れを、細かく制御・管理する電力網および都市構想のことです。発電にともなう環境負荷や、送電によるエネルギー損失を減らせるばかりでなく、自然災害などで送電が断たれたときでも、地域内に蓄えていた電気で生活を続けることが可能になります。
こうした、都市単位・地域単位での電気エネルギー制御を実現させるのも、電気エネルギー学の目標のひとつです。
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先生情報 / 大学情報
九州工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 三谷 康範 先生
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