熱エネルギーを捨てずに有効活用する、熱バッテリーとは?

熱エネルギーを捨てずに有効活用する、熱バッテリーとは?

エネルギーはみな最後には熱になる

私たちが、普段の暮らしや経済活動の中で使っているエネルギーは、電気やガス、化石燃料など、さまざまなものから生み出されています。そうしたエネルギー自体は目に見えないものですが、最後にはみな、熱エネルギーになっています。
地球温暖化をはじめとする環境問題に取り組む上で、省エネルギーのための施策は欠かせませんが、最終的に発生する熱エネルギーは、無駄に捨てられている場合がかなり多いのが現状です。熱エネルギーを捨てずに活用するための技術は、これからの省エネルギー施策の要の一つになると考えられています。

工場における熱の循環型再利用

工場でボイラーを稼働させていると、排水蒸気や排温水が発生しますが、従来、それらに含まれる熱は、そのまま捨てられて無駄になっています。そこで、「熱バッテリー(ケミカル・ヒートポンプ)」の研究が進められています。これは、排水蒸気や排温水を、水と反応する材料を用いた熱バッテリーに取り込み、水の潜熱を利用して熱を蓄熱した上で、より高い温度で放出して、工場内の乾燥庫の稼働などに活用する仕組みです。熱バッテリーに用いる材料の組み合わせによっては、400℃もの熱を蓄積することも可能になります。熱の循環型再利用システムとも言えるこの仕組みを導入すると、従来の工場で必要だった燃料を2割から3割、工場によってはそれ以上節約できることが明らかになっています。

カーボンニュートラルを実現するために

熱バッテリーを用いた熱エネルギーの循環型再利用システムでは、装置が大型になってしまうことや、エネルギー消費効率(COP)をより向上させる必要があるなど、導入に際してまだいくつかの課題があります。しかし、多くの企業が現在、二酸化炭素を排出しないエネルギー源に置き換える「カーボンニュートラル」を実現するよう迫られています。熱エネルギーを捨てずに有効活用できるこのシステムは、さらに注目を集めていくに違いありません。

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金沢大学 理工学域 機械工学類 准教授 大坂 侑吾 先生

金沢大学 理工学域 機械工学類 准教授 大坂 侑吾 先生

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高校生の頃は、自分は将来何をすればいいのかわからないという人が大半ではないかと思います。自分もかつてはそうでした。人から夢を持ちなさいと言われても、すぐには答えを出せないでしょう。しかし、答えが見つからなくても、自分はいったい何をしたいんだろうと考え続けながら、一歩ずつ進んでいけば、結果として、進んだ道が最善の道に自然となっていると思います。いろいろなことを経験しながら、肩肘張らずに、がんばっていってください。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。