熱エネルギーを捨てずに有効活用する、熱バッテリーとは?
エネルギーはみな最後には熱になる
私たちが、普段の暮らしや経済活動の中で使っているエネルギーは、電気やガス、化石燃料など、さまざまなものから生み出されています。そうしたエネルギー自体は目に見えないものですが、最後にはみな、熱エネルギーになっています。
地球温暖化をはじめとする環境問題に取り組む上で、省エネルギーのための施策は欠かせませんが、最終的に発生する熱エネルギーは、無駄に捨てられている場合がかなり多いのが現状です。熱エネルギーを捨てずに活用するための技術は、これからの省エネルギー施策の要の一つになると考えられています。
工場における熱の循環型再利用
工場でボイラーを稼働させていると、排水蒸気や排温水が発生しますが、従来、それらに含まれる熱は、そのまま捨てられて無駄になっています。そこで、「熱バッテリー(ケミカル・ヒートポンプ)」の研究が進められています。これは、排水蒸気や排温水を、水と反応する材料を用いた熱バッテリーに取り込み、水の潜熱を利用して熱を蓄熱した上で、より高い温度で放出して、工場内の乾燥庫の稼働などに活用する仕組みです。熱バッテリーに用いる材料の組み合わせによっては、400℃もの熱を蓄積することも可能になります。熱の循環型再利用システムとも言えるこの仕組みを導入すると、従来の工場で必要だった燃料を2割から3割、工場によってはそれ以上節約できることが明らかになっています。
カーボンニュートラルを実現するために
熱バッテリーを用いた熱エネルギーの循環型再利用システムでは、装置が大型になってしまうことや、エネルギー消費効率(COP)をより向上させる必要があるなど、導入に際してまだいくつかの課題があります。しかし、多くの企業が現在、二酸化炭素を排出しないエネルギー源に置き換える「カーボンニュートラル」を実現するよう迫られています。熱エネルギーを捨てずに有効活用できるこのシステムは、さらに注目を集めていくに違いありません。
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金沢大学 理工学域 機械工学類 准教授 大坂 侑吾 先生
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