言葉が通じるだけじゃダメ? 相手への配慮がある言語表現とは
文化を反映する「言葉」
言葉とは、単に情報を伝えるだけのものではありません。言葉には話し手の意図や感情が込もるため、相手との関係に影響を及ぼすものでもあります。さらに言葉の使い方や表現の仕方は、例えば「この場面では謝罪すべき」といったように社会通念とされている面もあります。私たちが幼い頃から身につけて使っている表現は、日本文化の中で求められているものです。
そう考えると、外国語を学ぶ時にも、言語的な面だけではなく、その国の文化的な面も反映した表現を身につける必要があることに気づきます。そこで、相手の文化にとって受け入れやすい、配慮ある表現を考えていくのが「語用論」という分野です。
授業では身につかない「語用論的」能力
誰かに何かをしてほしい時、私たちは「〇〇してもらえませんか?」と伝えます。しかし、英語でこれを"Will you...?"などと表現すると、場面によっては「失礼な人!」と思われることがあります。英語圏では「個の自由」を尊重するため、押しつけや決めつけを避けて、より相手に選択肢を与えたり、間接的な表現になるよう、文法的な工夫をします。また謝る時に、英語圏では詳しく理由を述べることが誠実とされますが、日本では言い過ぎると自己保身の言い訳にとられるなど、母語の文化に応じた配慮が求められる場面もあります。しかし、英語を使う上で必要な語用論的能力は、今、学校で学んでいる文法や表現方法の中では十分に身につけることができません。
円滑なコミュニケーションのために
語用論の研究では、ネイティブスピーカーからさまざまな場面における表現について、文化的理由も含めて調査します。そのデータをもとにロールプレイなどを交えながら適切な表現について学習者と考えることもあります。ただ、言葉は文化だけでなく個人差やとらえ方の違いも多く、あるネイティブスピーカーの表現が絶対正しいとも言えません。大切なのは、覚えた表現をそのまま使うのではなく、場面に合わせて相手の利益、欲求が何かを考えることなのです。
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