「ことば」の研究-英語と日本語に共通する「例外」にフォーカス!
言語の例外に注目すると
英語の名詞が複数形になる場合、規則的に変化するものと不規則に変化するものに分かれます。後者の場合、例えばネズミを意味する「mouse」は複数形だと「mice」ですが、コンピュータのマウスを指すときには「mouses」も例外的に使われます。単語だけではなく、文でもこのような例外表現はよく見られるので、それらを観察しながら例外がどんな使われ方をしているのか、普通の表現と例外表現では何が違うのかなどが探究されています。これは英語に限るものではなく日本語でも行われており、大きく「ことば」の研究の一部となっています。
文法的におかしいなら、なくても良い?
例外表現は、たいてい文法的におかしくない普通の表現に置き換えることができます。それならなくても良さそうなものですが、実はしっかり存在意義があるのです。例えば、Bronskyさんという人をとても賢いと評価している人がいて、他の人にそれを告げたとします。そのとき、相手がBronskyさんを同じように評価していなければ、「Bronsky clever!?」と、動詞がなく文法的に不完全な表現がリアクションに使われることがよくあります。ここには、「本当に?」「信じられない!」など、一定の話し手の気持ちが込められていて、それがこの短い言葉で表現されているのです。
異なる言語の共通点と相違点
同様の事例はやや形を変えて日本語にもあり、似通った例外が存在することがわかっています。何か美味しいものを食べたときに、思わず「これ、うまっ!」などと言うことがありますが、これも一例です。このように例外の文法的性質を研究していくことは、英語と日本語を対照させ、両言語の共通点と相違点を考えることに繋がります。そしてその研究からは、言語間で共通する一般性と言語ごとの個別性が見えてきます。「例外」という小さな視点から始まるこの種の研究は、「言語」という大きなフィールドに影響を与える可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
学習院大学 文学部 英語英米文化学科 教授 今野 弘章 先生
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