結晶の神秘から、物質を読み解く「雪氷物理学」
雪氷物理学とは
雪や氷の結晶ができるメカニズムを解き明かす研究を雪氷物理学と言います。
雪の結晶が六角形なのは、水分子が六回対称に並ぶからですが、よくイメージされるパターンのさまざまな結晶の形になるのは、周囲の湿度や温度に応じて結晶が自ら最適な形を選んでいるからです。そのプロセスを微細に観察すると、水の分子が結晶として安定するために、熱や分子がダイナミックに移動していることがわかります。
また、塩水を実験装置で片側から冷やすと指状に伸びる結晶ができます。塩分は氷の結晶に入れないので、指と指のすき間は塩分濃度が高くなり、この部分は氷の結晶が成長しづらいので、指状の結晶はどんどん伸びていきます。このように、結晶は自ら最適なパターンを作っています。
ハイドレート結晶を実験で作る
クラスレートハイドレートとは「包接水和物」のことで、メタンハイドレートは、かごのように並んだ水分子の格子の中にメタンの分子が入っている結晶です。そして、海底では土の中に分散していたり、粒状、層状、塊状といろいろな状態で見つかっています。これがどのようにしてできたかはまだわかっていません。
結晶の形からいろいろな情報が引き出されるので、メタンハイドレートの多様な状態を実験で再現する研究が行われています。メタンの代わりにTHFという物質を用いたモデル実験では、従来から再現されていた分散状だけでなく、粒状、層状、塊状のハイドレートも再現することに成功しました。
結晶の研究が貢献できる分野
結晶の形の研究は物理学であり、生物学や資源、環境の研究とは別の分野です。しかし、塩水が凍るメカニズムの研究は細胞の凍結保存や海氷の研究に役立つでしょうし、ハイドレートの研究は資源や環境の研究家が普段行っている研究とは違った角度からの貢献ができると考えられます。
結晶の成長が起こっている場であれば、どの分野にも貢献できるのが、結晶の研究のおもしろさだと言えるでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
明治大学 理工学部 物理学科 教授 長島 和茂 先生
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