微生物の力で、新たな「スーパー機能性食品」が生まれる

捨てられる青果を「機能性食品」に
サイズや形が規格外という理由で、膨大な量の野菜や果物が廃棄されています。例えば熊本県では、生産量日本一のトマトをはじめ多種多様な青果が生産されていますが、収穫量の40%ほどが廃棄されているそうです。また無事に出荷されても、加工・調理の段階で、体によい成分を含んだ果物の皮や野菜の茎などが大量に廃棄されます。
そこで、それら廃棄される青果を微生物の力でつくりかえ、健康によい成分や植物本来の甘み・香りを残しつつ、腸内の善玉菌の栄養源にもなる、画期的な機能性食品材料の研究が進められています。
体によい天然色素も
微生物の力で、植物性色素「アントシアニン」を自由につくりかえる研究も進んでいます。ブルーベリーをはじめさまざまな植物に含まれているアントシアニンには、生活習慣病を予防したり、がん細胞の増殖を抑えたりする働きがあるといわれています。そのため、サプリメントや薬品の原料として注目されているのですが、栽培した植物から色素を抽出・精製するのに手間がかかり、さらに、植物の栽培は天候などの影響を受けやすいのが難点です。そこで、簡単な構造である「黒米」由来のアントシアニンをベースに、さまざまな微生物と反応させることにより、食品着色用の発酵色素を自由につくる研究が進められています。
音を聞かせて「スーパー麹菌」を生み出す
味噌や醤油、甘酒などをつくる際に欠かせない「麹(こうじ)菌」は、音波によって「変身」するという面白い特性を持つことが発見されました。麹菌がデンプンやタンパク質を分解するときには、いろいろな酵素を生産・分泌するのですが、一定の音波を当て続けると、簡単に酵素の生産・分泌をコントロールできるのです。
聞かせる音波(周波数)によっていろいろなタイプの麹菌をつくり出せるので、研究が進めば、「血圧上昇を抑える味噌」や「美肌効果を高める甘酒」といった商品がつくれるようになるかもしれません。
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崇城大学生物生命学部 生物生命学科 教授三枝 敬明 先生
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