実は奥深い「モーター」の世界
回転体に電流を流す方法とは
電車の屋根についているパンタグラフを見たことがあるでしょう。パンタグラフとそれが接する架線は、動いているものと静止しているものとがこすれながら通電する機構です。
同様の機構がモーター(電動機)や発電機にも使われています。モーターは導体に電流を流して電磁石にし、それを回転させて動力を得るもので、発電機はモーターと反対で、導体を回転させて電気を得るものです。回転体に直接配線を接続すれば絡まってしまうため、回転体にリング状の導体の「スリップリング」を取り付けて、そこに「ブラシ」を押し当て、互いがすり合って電流が流れる仕組みが使われています。ブラシは主に黒鉛で作られているため摩耗しやすく、特に発電所や工場などの大きな発電機は交換にコストがかかります。そこで、ブラシの寿命を延ばすための研究が行われています。
ブラシとスリップリングの謎
ブラシとスリップリングは古くから使われている機構ですが、ブラシとスリップリングが接触する面は見えないため、そこで起こっている現象はいまだによくわかっていません。また、ブラシの摩耗は湿度や回転数、気温、振動などさまざまな要因に影響を受けるため、コンピュータでのシミュレーションは困難です。そのため、実際にいろいろな条件で回転させて摩耗量を調べる実験を行います。収集したデータを検証、解析し、接触面での現象を予測してブラシの原理を解明し、摩耗しにくいブラシの開発へとつなげます。
スリップリングの材質も検証
スリップリングについても材質ごとの特性が調べられています。従来は銅が使われていましたが、銅は鋳造過程で気泡が入ってしまい、それが重さのバランスを損なう原因となっていました。近年使用されている鋼鉄のスリップリングは圧延で製造されるので気泡が入らず、安価という利点もあります。ただし鋼鉄は、銀や銅などの貴金属とは摩耗や通電などの特性が全く異なるため、その特性を解明するための研究が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
帝京大学 理工学部 機械・精密システム工学科 助教 福田 直紀 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
電気工学、電気機械工学、メカトロニクス先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?