香港で政治はどう出現したか
植民地時代の香港の政治
中国の一部だった香港が19世紀半ばからイギリスの統治下に入っていた時代、そして1997年に中国に返還された後、香港の政治はどのように変化したのでしょうか。
イギリス統治下時代の香港は、「行政的民意吸収型政治」を行っていました。これは、諮問委員会を作り、そこに民間人を登用するのですが、高い地位の人だけではなく、比較的若く、将来の活躍が期待される人たちも登用されました。これらの登用された人たちが市民の不満を伝達する仕組みです。
民主化の実験室
1970年代から80年代初頭までは、香港はこの制度で安定していました。ところがそこに、返還問題が起こります。1997年に中国に返還されたら、自分たちの社会はどうなるのか。大きな不安が香港社会を覆いました。それを受けて、香港では発足したばかりの区議会で1982年に初めて普通選挙制度が実施されました。普通選挙制度はその後立法評議会にも部分的に導入されました。
返還と前後して、中国内地は経済的に発展し始めます。香港市民は「それでは自分たちの強み、特徴は何か」と考えるようになりました。一つの答えが「民主化」でした。返還後、普通選挙制度が拡大しないことに不満を訴えるようになりました。2007年末、中国中央政府は香港政治のトップである行政長官の選挙に2017年から、国会に当たる立法会の選挙に2020年から全面的な普通選挙を導入することを容認したのです。
香港の政治が変化した背景
香港は、NIESのなかでいち早く工業化に成功しますが、「経済は一流、福祉は三流」と言われてきました。それに対する不満と香港返還への不安が合わさって、戦後世代は政治参加にむかいました。
返還後、アジア金融危機などの問題が立て続けに起こり、香港は著しい成長の中国内地に押されぎみです。返還問題が起きた80年代以降に生まれた世代は、その前の世代とは違い、共産党政府への対抗というイデオロギー(政治や社会に対する考え方)から離れ、ストレートに香港の経済格差を批判しています。
参考資料
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