無尽蔵なのにレアメタル! チタン製造の難しさと将来性

無尽蔵なのにレアメタル! チタン製造の難しさと将来性

日本は世界トップレベルのチタン輸出国

「チタン」という金属は、今ではメガネのフレームやゴルフクラブにも使われていて、あなたにもなじみがあるでしょう。チタンの特徴としては、軽くて丈夫で、さびないといった利点がよく知られています。資源的には、地殻中に9番目に多い元素で、金属に限ると4番目に多く、いわば無尽蔵の資源です。
日本は輸入したチタン鉱石を製錬し、純度の高い金属の形にして輸出しています。世界で生産されている金属チタンの2~3割は日本製です。しかもその品質は純度が高く常に安定しているという最高級品で、日本で生産されるチタンのほとんどが航空機など、高品質が要求される工業製品に使われています。

金属チタン製造の難しさ

チタンは資源的には無尽蔵ですが、「レアメタル」の1つに数えられています。それは、金属チタンの製造が非常に難しいためです。チタンは天然では酸化物として存在しているので、鉱石から酸素を除去(還元)して金属として純度の高い形にしなければ利用できません。しかしチタンは酸素と結びつく力が非常に強いため、高純度の金属をつくることが大変難しいのです。このため、チタンの発見から本格的な工業的利用までには150年以上の年月がかかりました。
それでも、現在使われている製造方法では時間とコストがかかり、装置1基あたり1日に1トンしか金属チタンは製造できません。今でもチタンの製造には、1トン当たり100万円以上のコストがかかり高額です。

進む製造法の研究

そこで、現在コストの低い製造方法が研究されています。例えば、チタンの低級塩化物を使って高速でチタンを還元する方法や、金属カルシウムを還元剤として使用する方法です。しかし、これらの方法もコストや技術的な問題があり、まだ実用化には至っていません。
しかし、仮にコストが今の半分になれば、チタンはステンレス鋼とコスト面で競争できるようになります。そうすればチタンはレアメタルではなく一般的な金属「コモンメタル」として、飛躍的に利用の場が広がることでしょう。

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東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 岡部 徹 先生

東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 岡部 徹 先生

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材料化学、金属学

メッセージ

私は20年以上、レアメタル一筋に研究してきました。今でこそ、レアメタルは日本の産業に不可欠な金属として注目を集めていますが、20年前は一般にはほとんど知られておらず、材料の研究者の間でも注目されない分野でした。それでも、私は偶然出会ったレアメタル研究の面白さに魅せられ、「だれもやらないこと、知らないことを究めよう」と、この研究に没頭しました。したがって、高校生のあなたにも、ぜひ言いたい。「自分がおもしろいと思ったことは、周囲の状況にかかわらずに追究すること!」これがとても大切なことです。

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