ゲーム理論で「Win-Winの関係」を導く

ゲーム理論で「Win-Winの関係」を導く

コンビニの出店戦略を考える

ファミモとセレブという2つのコンビニが、A駅かB駅の前に出店を考えているとします。見込まれる店舗利用客数は、A駅が600人、B駅が300人で、ファミモとセレブが同じ地域に出店した場合、ファミモがセレブの2倍の客数を獲得できるとします。この時、セレブは、どちらの駅前に出店をした方が得でしょうか?
一見すると利用客数が多いA駅が良さそうですが、A駅はセレブの出店にかかわらずファミモの出店が予想されます。そうなると、セレブは、200人しか獲得できません。しかし、ファミモの出店の可能性が低いB駅に出店した場合、全顧客を獲得し300人で、A駅よりも多くなります。つまり、セレブはファミモの行動を考えるとA駅より、B駅に出店する方がより多くの客数を獲得できるわけです。

企業戦略から動物の進化まで、用途はさまざま

このように複数の主体が、その意思決定に関して、相互作用する状況を研究する理論を「ゲーム理論」と言います。ゲーム理論は、上記のような企業戦略のほか、二国間交渉といった政治やゲームソフトの開発、珍しいところでは、動物の進化の分析など、さまざまな分野で使われています。

裏の裏をかき合うことで、双方が利益を得る

ゲーム理論では、相手の出方のパターンを考慮してこちらの出方を考えます。ただし、相手もゲーム理論に基づいて戦略を立てる可能性があるため、ゲーム理論を使っても必ずしも勝てるわけではありません。では、ゲーム理論を使う意義は何なのでしょうか? それは、「双方により利益がある結果が得られる可能性が高い」ということです。
かつてのゲーム理論は、もっぱら「勝つか負けるか」の研究が中心でしたが、近年は、「できるだけお互いが納得できる状態に近づける(=Win-Winの関係になる)」という点に研究の主眼が置かれています。双方がゲーム理論を使えば、お互い相手の出方をふまえて自身の戦略を立てるため、その繰り返しによって、双方により利益がある結論を導きやすくなるのです。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 教授 渡辺 隆裕 先生

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 教授 渡辺 隆裕 先生

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社会科学、経済学、経営工学、経営学

メッセージ

ゲーム理論は、企業同士が競争をしたり、国と国が交渉したりするのを将棋や囲碁のような「ゲーム」ととらえて分析する学問で、経済学、経営学、政治学から生物学まで、さまざまな分野で使われています。応用範囲が広く、とても面白い学問ですので、あなたがこの研究に興味を持ち、一緒に勉強してくれることを期待しています。ちなみに、『ゲーム理論入門』という本も書いていますので、もし興味があれば、一度手にとって読んでみてください。

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