災害にも強いモバイル通信ネットワークをつくる

災害にも強いモバイル通信ネットワークをつくる

生活に不可欠なものとなったモバイル端末

携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末は、いつでもどこでも人とつながり、インターネットに接続できるツールとして、いまや生活に欠かせないものとなりました。しかしこうした便利なツールも、一度、地震などの災害が発生すると、途端につながらなくなったり、メールが届かなくなったりします。それは、携帯電話を無線でつないで制御している基地局が壊れたり、短時間に大量の情報が情報通信ネットワークに集中したりしたために、パケットデータ(通信用の小さなデータのかたまり)が詰まったり失われたりするためです。

社会のインフラとしての高信頼化が課題

モバイル通信を含めた情報通信ネットワークは、社会のインフラとして、人類の生命や財産に関わる重要な活動を支えるものです。しかし、現状ではそうした活動を完全にサポートするだけの信頼性はまだありません。東日本大震災での混乱は、そのことを如実に示しました。
そこで政府が主導して、各携帯電話会社や通信事業者は、ネットワークの高信頼化に力を注いでいます。具体的には、基地局の強化やネットワークの二重化、さらに移動基地局の増強など、さまざまな対策を講じています。

各人の携帯電話をつないでネットワークを構成

さらに、災害時のモバイル通信システムとして研究が進められているのが、「モバイル・アドホックネットワーク」です。もともとはパソコンの無線LANの動作モードのひとつで、端末同士が互いに直接通信をする「アドホックモード」を応用したものです。アドホックモードでの通信をバケツリレー方式でつないでいくと、個人の持っている複数の端末を介して無線の到達範囲を超えた通信ができます。つまり、基地局に頼ることなく、一人ひとりの携帯電話やスマートフォンをつなぐことでモバイル通信を可能にするものです。しかし、バッテリーの持ち時間や個人情報のセキュリティをどうするかなど、解決すべき課題も残されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

広島市立大学 情報科学部  教授 高野 知佐 先生

広島市立大学 情報科学部 教授 高野 知佐 先生

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情報工学、通信工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

身近なインターネットやスマートフォンといったツールは非常に便利なものですが、地震などの災害が発生するとネットワーク機能が停止し、安否情報などの緊急性の高い情報の確認ができないという問題が発生します。私の研究は、人間の社会活動を円滑に進めるために、情報通信ネットワークの高信頼化を進めることです。具体的には、この大規模な自然界が、まるで神様がいるかのように秩序立って見える「世界のありかた」の秘密を、人間が作る情報通信ネットワークの設計に適用し、新しい高信頼システムの実現をめざしています。

広島市立大学に関心を持ったあなたは

広島市立大学は、広島市の都市像である「国際平和文化都市」にふさわしい大学づくりをめざして、1994年に「科学と芸術を軸に世界平和と地域に貢献する国際的な大学」を建学の理念として開学しました。
世界と地域が求める新しい時代の要請に応えるため、「国際、情報、芸術、平和」をキーワードに、特色ある教育研究活動を通じ、学術の振興と感性豊かな創造力、実践力を備えた人材を養成し、教育研究の成果を地域に還元するとともに広く世界に発信しています。