「わかったふり」を見抜く? 感情を読み取るAI技術

「わかったふり」を見抜く? 感情を読み取るAI技術

本当にわかったかを見抜くAI

授業中に先生から「わかった?」と聞かれて、実はあまり理解できていなかったものの「はい」と答えた、そんな経験はありませんか。この「わかったふり」をAIが見抜いて、先生の代わりにサポートしてくれるとしたら、学びの取りこぼしが減らせるかもしれません。現在、「パターン認識」という技術を使い、AIが生徒の表情を解析して本当の理解度を推定する研究が進められています。理解度が低いと判断されると、先生の実写アバターが声をかけて、指導してくれる仕組みです。未来の教室には、そんな光景が実現するかもしれません。

微表情が心の中を表す

とはいえ、表情から感情を読み取るのは簡単ではありません。現在のAIは、喜怒哀楽といったわかりやすい表情なら判別できますが、複雑な感情の動きや思考までは読み解くことができないのです。人の内面は、無意識に現れるわずか0.2秒ほどの「微表情」に表れると言われています。目視では見逃してしまいがちな微表情の変化をAIがとらえられれば、心の動きを読みとれる可能性があります。ただし、微表情と心理状態とを関連付けたデータを集めることは難しく、AIが確実に判断するには、まだ多くの課題が残されています。

アバターが先生に

もう一つ重要なのが、指導役となる実写アバターの開発です。生徒の信頼を得るには、アバターが自然に振る舞い、本物の先生のように感じられなければいけません。そのため、話す際の身ぶりや手ぶりといった動作の再現にも取り組まれています。現在、実用化されているアバターの多くは、実は人が裏で操作しているものですが、将来的にはAIが自律的にアバターを動かすことが求められています。一方で、人間そっくりに作られたアバターには倫理的な課題も残されており、特にヨーロッパでは「人間と区別がつかないAI」の使用に対して厳しい制限が設けられています。技術の進化と社会の受け入れのバランスをどうとるかが、今後の大きな課題となっています。

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先生情報 / 大学情報

鳥取大学 工学部 電気情報系学科 教授 岩井 儀雄 先生

鳥取大学工学部 電気情報系学科 教授岩井 儀雄 先生

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知能ロボティクス、知覚情報処理

先生が目指すSDGs

メッセージ

デジタル技術の進化によって、めまぐるしく変化している時代だからこそ、自分で考えて問題を解決する力や、新しいアイデアを生み出す力がより大切になっています。もちろん、新しいものを生み出すのは簡単ではありません。今や検索エンジンの代表格であるGoogleも、最初に登場したサービスではありません。大切なのは、「これ使えるかも」と感じたアイデアに、自分なりの工夫を加えて、より良い形をめざして挑戦し続けることです。その力を蓄えながら、ぜひ未来を自分の手で切り開いていってください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

鳥取大学に関心を持ったあなたは

鳥取大学は、教育研究の理念に「知と実践の融合」を掲げ、高等教育の中核としての大学の役割である、人格形成、能力開発、知識の伝授、知的生産活動、文明・文化の継承と発展等に関する学問を教育・研究し、知識のみに偏重することなく、実践できる能力をつけるように努力しています。また、研究・教育拠点、幅広い専門的職業人の養成、地域の生涯学習機会の拠点、社会貢献機能など個性輝く大学を目指し、地方大学にこそ求められるオンリーワンの研究開発を行い、社会に貢献し、国際的競争力を確保できる大学運営を目指しています。