強度を高めた金属が、建物や車の可能性を広げる
スカイツリーに使われた鉄骨
東京スカイツリーの主な建築材料は鉄骨です。スカイツリーより50年以上前に造られた東京タワーも鉄骨で造られていますが、もし東京タワーと同じ鉄骨を使っていたら、スカイツリーは634mの高さを成し遂げられなかったでしょう。スカイツリーには現代の標準的な鉄骨よりも、さらに強度を上げた鉄骨が使われているのです。
混ぜたり、細かくしたり
金属の強度を上げるには、いくつかの方法があります。例えば、航空機に使われているジェラルミン合金は、アルミの中に銅を混ぜて温度を上げることで内部にある種の化合物が生成され、強度が上がります。金属の結晶を細かくするのも一つの方法です。フライパンやパイプ椅子などの身の回りにある金属は髪の毛程度以上の大きさの結晶で構成されています。結晶を数百ナノメートルにまで小さくすると、結晶粒の境界面積が増えることで変形しにくく強くなります。
しかし金属に限らず材料は、強くなると伸びがなくなり、折れやすくなります。レースで使用されるような自転車はフレームがカーボンでできているため、軽くて強度が高い一方で、何かに強く当たったら曲がることなく折れてしまいます。鉄製フレームの汎用的な自転車は、まずは曲がるので、いきなり折れることはありません。材料は、用途によって優先するのは強度なのか伸びなのかを選択して、それに合った特性を引き出すように作られるのです。
車の燃費をあげる
車のボディに使われている金属の強度がもしも10倍にまで上げられたとしたら、その分ボディの厚みを薄くできるので、全体の金属の使用量が少なくなります。車の燃費は車両重量が軽いほど向上するため、よりエネルギー消費の少ない車が実現できるでしょう。鉄骨材料は牛乳よりも安い1kgあたり100円を下回る単価であるため、生活のあらゆるところで使用されています。強度を高めることで使用量を減らせれば、社会全体への影響はとても大きなものになるのです。
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金沢大学 理工学域 物類機械工学類 准教授 宮嶋 陽司 先生
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