マンガやアニメも、古典の伝統を受け継いでいる!
主人公の成長を描く教養小説
今あなたが好きな小説やマンガ、ゲームは、退屈に見えるかもしれない過去の古典と、実は密接な関係があります。物語のストーリー展開やキャラクターは、繰り返し使い回されているからです。
主人公がさまざまな経験をしながら成長する、「教養小説」というジャンルがあります。冒険小説の『宝島』もその一つなのですが、ポケモンや『ONE PIECE』『SLAM DUNK』も教養小説から多くを受け継いでいます。
『カリオストロの城』が踏襲するもの
宮崎駿監督の出世作であるルパン三世のアニメ映画『カリオストロの城』も、欧米の伝統的な教養小説の流れをくんでいます。追い求めた宝は結局、お金にならない古代の遺跡でしたが、宝探しの過程でルパンとクラリス姫は人間的に成長するのです。
二人のストーリーは、ギリシャの古典叙情詩『オデュッセイア』のナウシカア姫のエピソードとも共通しています。流れ着いたみすぼらしい男が、実は英雄であることに姫は気づき、恋心を抱きます。しかし、住む世界が違うという運命を受け入れ、二人は別れます。ところが宮崎駿監督は、このエピソードを知らずに『カリオストロの城』をつくりました。後でこれを知った宮崎駿監督は、次作の『風の谷のナウシカ』で、『オデュッセイア』と異なる独自のナウシカ姫の物語をつくったのです。
見えない系譜を探る面白さ
文学作品に限らずマンガやアニメ、ゲーム、音楽など、文化というものは、時代やジャンルを超えて、影響し合っています。ときに、作者も読者も影響を受けていることに気づかないくらい、それらは結びついているのです。
「比較文学」では、国や言語などいろいろな枠を横断しながら相互関係を考えます。作品を比較することで、見えない系譜を見つけ出し、その系譜をたどることで、意図や意味の変化を探るという、まさに宝探しのような学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 文学部 比較文学専修 教授 橋本 順光 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
比較文学先生への質問
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