ソーシャルメディアでの政治コミュニケーションを考える

ソーシャルメディアでの政治コミュニケーションを考える

ソーシャルメディアと政治

SNSを含めソーシャルメディア上では、日々有権者が政策や政党について、あるいは次の選挙について話し合ったり、政治家が自らの考えを発信したりしています。中でも「X(Twitter)」は、ユーザーの投稿内容や、フォロー情報が公開されているため、それらのデータの収集・分析が可能です。どの政党、政治家が多くフォローされているのか、特定の政党の政治家をフォローしている人たちはほかにどんな政治家をフォローする傾向があるのか、東京オリンピックの開催のような公共性の高い話題について、各政治家がどのような意見を表明したのか、といったことがわかります。

ウクライナ人の意識の変化

2016年に行われた研究では、ウクライナにおけるTwitter(当時)の1年間の投稿がすべて分析されました。ウクライナでは西側に暮らす人々はウクライナ語を、ロシアに近い東側の人々はロシア語を話す傾向がありますが、分析の結果、ソーシャルメディアでは予想よりもロシア語の投稿が多く見られました。
しかし近年の投稿を分析すると、ウクライナ語の投稿が急増しています。これはロシアとの衝突によってウクライナ人としてのアイデンティティが高まり、ウクライナ語で自らの意見を表明しようという動きが広がったからであると考えられます。

量的・質的研究を通して

ウクライナの研究結果は膨大なビッグデータの分析から得られました。一方で、個別の事象から見えてくることもあります。一般的に地方より都心部の方がソーシャルメディアユーザーは多く、政治コミュニケーションにも活用されやすいといわれています。しかし、例えば日本の地方選挙では、自らの政策を伝えるためにうまくソーシャルメディアを活用している政治家もいることがわかります。統計やデータ分析を用いる量的研究と、個別の事象から分析する質的な研究の両方を追求することで、ソーシャルメディア上での政治コミュニケーションのあり方がより明確に見えてくるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

一橋大学 社会学部 社会学科 教授 ジョナサン ルイス 先生

一橋大学 社会学部 社会学科 教授 ジョナサン ルイス 先生

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政治学、情報社会学、メディア学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は大学で面接を担当することがありますが、自らの考えをアピールするとき、多くの学生が高校時代の話を持ち出します。文化祭や部活といった経験は大切ですが、過去よりも現在に目を向けて、例えばボランティアや報道で見聞きするようなことなど、より広い視野を持ってほしいと思っています。また、大学に入った後は、自分の専攻以外のスキルも身につけることをお勧めします。音楽、プログラミング、ボランティアなどなんでも良いので、何かを習得することで自分のオリジナリティにつながるはずです。

一橋大学に関心を持ったあなたは

一橋大学の大きな特色として、まず第1に挙げられるのは、我が国で最も伝統のある社会科学の総合大学として、常に学界をリードしてきたという長い歴史と実績、並びにこの伝統を受け継ぎ、人文科学を含む広い分野で、新しい問題領域の開拓と解明を推進する豊富な教授陣に恵まれていることです。第2は、商学部・経済学部・法学部・社会学部の垣根が低く、学生は各学部の開設科目を自由に履修することができます。また、10人から15人程度の少人数で行われているゼミナール制度(必修)を核とする少数精鋭教育も本学の特色のひとつです。