ソーシャルメディアでの政治コミュニケーションを考える
ソーシャルメディアと政治
SNSを含めソーシャルメディア上では、日々有権者が政策や政党について、あるいは次の選挙について話し合ったり、政治家が自らの考えを発信したりしています。中でも「X(Twitter)」は、ユーザーの投稿内容や、フォロー情報が公開されているため、それらのデータの収集・分析が可能です。どの政党、政治家が多くフォローされているのか、特定の政党の政治家をフォローしている人たちはほかにどんな政治家をフォローする傾向があるのか、東京オリンピックの開催のような公共性の高い話題について、各政治家がどのような意見を表明したのか、といったことがわかります。
ウクライナ人の意識の変化
2016年に行われた研究では、ウクライナにおけるTwitter(当時)の1年間の投稿がすべて分析されました。ウクライナでは西側に暮らす人々はウクライナ語を、ロシアに近い東側の人々はロシア語を話す傾向がありますが、分析の結果、ソーシャルメディアでは予想よりもロシア語の投稿が多く見られました。
しかし近年の投稿を分析すると、ウクライナ語の投稿が急増しています。これはロシアとの衝突によってウクライナ人としてのアイデンティティが高まり、ウクライナ語で自らの意見を表明しようという動きが広がったからであると考えられます。
量的・質的研究を通して
ウクライナの研究結果は膨大なビッグデータの分析から得られました。一方で、個別の事象から見えてくることもあります。一般的に地方より都心部の方がソーシャルメディアユーザーは多く、政治コミュニケーションにも活用されやすいといわれています。しかし、例えば日本の地方選挙では、自らの政策を伝えるためにうまくソーシャルメディアを活用している政治家もいることがわかります。統計やデータ分析を用いる量的研究と、個別の事象から分析する質的な研究の両方を追求することで、ソーシャルメディア上での政治コミュニケーションのあり方がより明確に見えてくるのです。
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