人間はどうやって味覚を感じるのか? わかってきた味覚のメカニズム

人間はどうやって味覚を感じるのか? わかってきた味覚のメカニズム

人はどのように味を感じるのか

味覚には甘味・酸味・塩味・苦味・うま味などがあり、人間は主に口の中でこれらの感覚を味わっています。味をこのようにいくつかの要素に分けて考察したのは、紀元前350年頃の古代ギリシャの哲学者・アリストテレスですが、なぜ人間がこれらの基本味を感じるのかについて分子レベルで解明されたのは、1900年代末のことです。
人間の口の中の細胞の表面には、レセプター(受容体)と呼ばれるタンパク質があり、甘味には甘味の、酸味には酸味のレセプターがあります。塩味、苦味、うま味、脂味などのレセプターもそれぞれ存在します。これらのレセプターは、自分が受け持つ味の要素が口の中に入ってきたときにそれと結合し、その情報を脳に伝えます。それによって、人間は味を認識するのです。

口の中以外にもある味覚のレセプター?

しかし、これらのレセプターは口以外にもあることがわかってきました。例えば、苦味のレセプターは、鼻の中の繊毛上皮や胃などの平滑筋にもあります。苦味のある物質はしばしば毒性をともないますから、鼻の中の繊毛上皮は、苦味物質をブロックしていると考えられます。胃の平滑筋にあるレセプターも、毒物を排除する役割を果たしているのです。ほかにも、味覚に関するレセプターは体のあちこちにあり、さまざまな生理機能を担っています。

「好き嫌い」には理由がある?

これらのレセプターが受け取った情報を脳に伝える「味覚の伝達物質」についても、研究が進んでいます。例えば、幼児が突然、食べ物を選り好みするようになることがありますが、それは単なる「わがまま」なのではなく、味覚の伝達物質の働き具合によるのです。同様に、甘い物を食べ過ぎるという行動も、甘味レセプターとその伝達物質の働きとの関係が考えられます。こうした味覚のメカニズムの解明がさらに進めば、嫌いなものをおいしく食べる方法や、食べ過ぎを防ぐ有効な方法を科学的に構築できるかもしれません。この分野の研究はまだ始まったばかりです。

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日本女子大学 家政学部 食物学科 教授 太田 正人 先生

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分子生物学、栄養学、歯科学

メッセージ

高校1年生の頃は部活に明け暮れ、ようやく進路について考え出した当初は、具体的な目標が思い浮かばず、大学に進むことにも意味を見出せずにいました。そんなとき、ある大学の先生が、「やりたいことを見つけるには時間が必要だから、大学に進んでいろいろな見方を学びなさい」とアドバイスをしてくださったのです。
高校生のときには大いに迷って、いろいろな人の話を聞きに出かけたり、読書やさまざまな体験を通じて考える機会を大切にしてください。そして、自分が本当にやるべきだと思えることを見つけられることを願っています。

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