封を開けずに中身がわかる!? テラヘルツ電磁波の威力

封を開けずに中身がわかる!? テラヘルツ電磁波の威力

赤外線より長く、マイクロ波より短い電磁波

目に見えないところをどうやって調べるか。例えば農産物なら内部成分、果物なら糖度などが品質を左右する重要なポイントとなるので、それらを出荷前にきちんと調べたい。だからといって一つずつ切って中身の成分調査をするわけにはいきません。そこで活躍するのが光です。
糖度を検査する場合なら近赤外線を使います。ミカンの甘みを調べるには、近赤外線を当てて、透過してきた光を分光器で分析し、近赤外線がミカンの中でどれぐらい吸収されたかを測るのです。光の吸収具合をこれまでの統計データに当てはめれば、ほぼ正確な糖度を割り出すことができます。
光は波長の長さによって、紫外線から可視光線、赤外線と続き、もっと波長が長くなると、やがてマイクロ波の領域に至ります。最近注目されているのが「テラヘルツ波」です。これは、赤外線より長くマイクロ波より短い領域にあり、光と電波の中間に位置するものです。

光波と電波の合わせ技

携帯電話やラジオの電波は、マイクロ波と呼ばれる波長の長い種類の電磁波に相当しますが、それらは物質を透過できる性質を持っています。そのため、家の中でも携帯電話で話ができるわけですが、赤外線になると物質に吸収されやすくなり、そのような利用は現実的ではありません。赤外線は物質に対する吸収のされ方の違いを利用することで、化学分析などに使われています。
一方、マイクロ波と赤外線の間に位置するテラヘルツ波は、これら両方の特性を利用することが可能です。つまり物を透過して、その中に存在している物質の種類や量を知ることができます。この特性を利用すると、封筒を開けることなく中に隠されている麻薬の探知ができたり、ある基板の上のタンパク質同士の結合を非標的で検出することが可能になるなど、これまで考えられなかった利用法が提案されています。
今後、農産物や食品検査にも応用が期待され、新しい品質評価や、農薬、アレルゲンの迅速な検査技術などへの研究が進められています。

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先生情報 / 大学情報

京都大学 農学部 地域環境工学科 教授 近藤 直 先生

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農産加工学

メッセージ

私は俗に言う「三ちゃん農業」、第二種兼業農家の長男として育ち、幼い頃は家族が農作業で大変な思いをしている姿を目にしてきました。そこで子どもの頃に考えたのが、農作業のできるロボット開発です。現在では農業ロボットの開発に関われるようになり、まだまだ人力作業も多くありますが、ロボットと名の付いた農業機械も増えつつあります。農業の担い手が減りつつありながらも、安心・安全な「食」が強く求められる日本だからこそ、農業関連の科学技術は大きく期待されています。

先生への質問

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京都大学に関心を持ったあなたは

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