親子関係・妊娠出産を科学する

親子関係・妊娠出産を科学する

親子関係の科学

親が子どもの世話をして、子どもが親のことを信頼して慕うようになるという親子関係は、ともすると当たり前のこととして捉えられてしまいますが、実際には様々な行動・反応がからんだ複雑な現象です。果たしてそのメカニズムを科学で解明することは可能なのでしょうか。また、一人一人個性の異なる赤ちゃんの世話について、経験則だけではなく、科学に基づきながらノウハウをまとめていくことはできるのでしょうか。

親子関係に必要な要素

結論から言えば、「育児」や「親子関係」に焦点を当てた脳科学による研究が進みつつあります。例えば、泣いている赤ちゃんを寝かしつける際には、赤ちゃんを5分ほど抱っこして歩き、眠ってから5~8分ほど抱いたまま待って布団に置くことで、多くの赤ちゃんはぐっすりと眠ってくれることが明らかになっています。また、親の養育行動には脳の内側視索前野という部位の中央部が大きな役割を果たしていることがわかってきました。さらに、子どもが抱く親への愛着は、親の養育行動、特に子どもの要求への感受性の高さや、子育てにおける我慢強さに影響を受けることも判明してきています。このような研究結果は、人間の赤ちゃんを観察するだけでなく、マウスでの実験や、人類に近い子育て行動を行う「マーモセット」というサルを観察・実験することで得られたものです。

未解明の「つわり」に挑む

マーモセットを使った人類の子育て研究が一定の成果を上げていることから、今後は妊娠・出産に関しても、動物実験により研究を進めることで、人類の役に立つ研究成果が得られるのではないかと期待されています。例えば、妊娠初期の胎盤形成時期に起こる「つわり」は、まだ発生のメカニズムや要因がよくわかっていません。マーモセットやマウスなどの人間以外の哺乳類でも、「つわり」に似た現象が起きるのかもしれません。まずは妊娠中に増えるホルモンの投与などを通じて、マウスを使った「つわり」の研究が妥当なのかどうかを調べていくところから、新たな研究がスタートしています。

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北海道大学 獣医学研究院  助教 矢野(梨本) 沙織 先生

北海道大学 獣医学研究院 助教 矢野(梨本) 沙織 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生理学、獣医学、医学、神経科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が子育てや妊娠出産について研究することにしたのは、私自身が子育てを経験し、そこに興味関心を持ったことと、科学的な裏付けのある育児情報を世の中にもっと増やしたいと思ったからです。あなたもぜひ、自分の経験ややりたいことをヒントに、学びたい分野を探してみてください。特に社会の中で当たり前だと思われていることの中にこそ、研究すべき課題が眠っていることがあります。日頃から様々な物事にアンテナを張り、疑問を持ってみることで、この先の進路の糸口が見つかるかもしれません。

先生への質問

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北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。