その水は高い? 安い? 安全? 水道で考えるこれからの街づくり
日本の水道は世界でも類を見ないほど安全
日本の水道水は、そのまま飲んでもおなかを壊したりしないほど安全です。これほど安全な水道は世界でもほかに類を見ませんが、その安全性を維持するための浄水処理には、さまざまな作業とそれにともなうコストがかかっています。
水道水の殺菌には塩素剤が用いられますが、塩素剤を投入すればするほど安全になるかというと、必ずしもそうではありません。今度は水に含まれる有機物成分と塩素が反応してできる「総トリハロメタン」と呼ばれる物質が問題になります。総トリハロメタンは発がん性が疑われており、塩素剤の量を増やせば総トリハロメタンも増えてしまいます。それらを除去するには、活性炭やオゾンを用いた高度浄水処理が必要です。
どの程度まで浄水処理をするのが最適なのか?
ここで考えなければならないのは、いったい、どの程度まで塩素消毒や高度浄水処理をすべきなのか、という基準です。浄水処理の基準を際限なく高めていけば、当然コストもかかるため、水道料金も値上げせざるを得なくなります。では、その水を一生にわたって摂取し続けても健康に影響ないと判断できる確率は、その危険性が10万人に1人なのか、それとも1億人に1人なのでしょうか。水道水が飲むのに安心でないと感じた人は、代わりにペットボトル入りの水を買うようになるかもしれません。こうした課題を解決するには、経済学的な視点や心理学的なリスク認知など、さまざまな要素を考え合わせた上で、客観的な評価基準を見定めなければならないのです。
客観的な評価基準に基づく施策を
ほかにも日本の水道には、老朽化して耐用年数を過ぎた水道管の交換工事と、それにともなうコストなどの課題があります。また、災害大国である日本では、水道のほかにも、安全や安心のために整備や更新が必要なインフラが数多くあります。こうした公共事業では、都市や社会全体を見渡し、リスクの扱いやコストに関する客観的なデータを考え合わせた上で、将来を見据えた的確な判断が必要になるのです。
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