人はお金とどう関わってきたか? 答えは歴史の中にある

人が生きることとお金の関わり
経済史という学問は、人が行ってきた経済活動の歴史について多角的な視点で研究します。経済活動は、モノやサービスの生産・分配・消費などのことです。需要と供給が価格を決定する「市場」が優勢な現代の経済活動で、お金は中心的な役割を担っています。ですが、親が子を養う、宗教儀式や埋葬に使うなど、古くからの「伝統・慣習」としてお金を使う行為は今も続いています。また、国が徴収した税金を道路建設といった公共事業にあてるなど、有史以来の「命令」による再分配も絶えず行われてきました。古代から今日まで、お金は「人が生きること」にどう関わってきたのか、それは経済史の重要な研究課題です。
現代と古代の貨幣制度はつながっている
経済史の分野の一つに、お金がどのように造られて、どのような制度で運用されてきたのかを研究する「貨幣史」があります。人は何千年も前から金・銀・銅などを使って貨幣を製造し、貨幣制度を運用してきました。古代の貨幣制度はどのようなものだったのか、現代の貨幣から読み解くことができます。例えば、ドル記号($)は、4世紀からローマ帝国で造られた「ソリドゥス金貨」の頭文字に由来するとされます。また、ポンド・ペンスといったイギリスの通貨単位には、ローマ帝国の貨幣制度の名残があります。
お金に対する人の振る舞いの歴史
経済史の重要な研究対象として金融危機があります。1929年のアメリカの株価暴落を機に起こった世界恐慌をはじめ、日本で1990年代に起きたバブル経済崩壊、2008年にアメリカの投資銀行が破綻したことによるリーマン・ショックなどは、世界を混乱させました。
金融危機を前後して人々がどのような価値基準で行動したのかを分析すると、お金に対する人の振る舞いの中に共通点が見えてきます。共通点からは、未来に再び金融危機が起きた際、どう行動すべきかを学ぶことができます。経済史の研究は過去に目を向けるだけではなく、未来の社会問題を考えることにもつながります。
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