苦い薬との上手な付き合い方
「良薬は口に苦し」なのはなぜ?
子どもの頃、薬を飲むのが嫌だった人は多いでしょう。一番の理由は「苦いから」だと思われます。なぜ苦いものは子どもに嫌がられるのでしょう? それは自然界において、苦みは毒のサインだからです。苦いものを口に含むと、毒物かもしれないと思って拒絶してしまう味覚のシステムができあがっているのです。大人になるとコーヒーやビールの苦みは毒ではないことを経験知として体得しているので、苦みも味の一種として楽しむことができますが、子どもは動物的な本能として苦いものを飲み込みたくないと思ってしまうのです。
では、なぜ薬は苦いのでしょうか。苦い成分の特徴として、水に溶けにくい性質が挙げられます。そして薬がよく効くためには、小腸で吸収されることが必要なのですが、水に溶けにくい方が吸収されやすいのです。「良薬は口に苦し」ということわざは、実は科学的にも裏付けがあることなのです。
小児喘息と薬の関係
喘息(ぜんそく)はアレルギーの一種で、ハウスダストやダニが主な原因です。気管支が炎症を起こすため、冷たい空気やタバコの煙といったアレルゲン以外の刺激でも咳が出やすくなります。そのため炎症を抑えるコントローラー(長期管理薬)と呼ばれる薬を毎日服用する必要があります。急な発作が起きた時はリリーバー(発作治療薬)を使います。小児喘息は成長とともに症状が和らぐ例も多いので薬の量や服用方法の管理も大事になります。
子どもが飲みやすい薬とは?
毎日飲む薬の苦みを感じさせない工夫として、カプセルや糖分を含んだ甘い皮膜で覆う「糖衣」、オブラートなどで包むという方法がありますが、どうしても剤形が大きくなり、小さな子どもには飲みづらくなります。小児喘息の場合、発症する3分の2は3歳以下なので、大きい剤形の薬を飲み込むのは難しいでしょう。そのため、粉薬や水薬といった剤形のものに甘い味や香りをつけて飲みやすくする方法が取られています。
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高崎健康福祉大学 薬学部 薬学科 教授 森 哲哉 先生
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