講義No.14688 医学 生物学

「てんかん」のメカニズム解明に挑む!

「てんかん」のメカニズム解明に挑む!

「てんかん」の解明に役立つ動物モデル

「てんかん」は、脳に「てんかん焦点」と呼ばれる異常箇所ができて、神経細胞を伝わる電気信号が乱れ、そこに一定の条件が加わると、けいれんなどの発作が起きる病気です。成人患者では、脳の「扁桃(へんとう)体‐海馬」という記憶や学習をつかさどる部位に、てんかん焦点が多く発生することがわかっています。
現在は服薬により日常生活が送れるようになりましたが、病気のメカニズムはわかっていない点が多くあります。その解明を進めていくと期待されているのが、動物モデルを使った詳細な研究です。

医療材料の発達で精度の上がった実験系

てんかんの動物モデルとして、けいれんを起こす薬剤を与えて発作に近い状態をつくり出すことが多く行われています。こうしたモデルはけいれんに至る状態を簡便に評価できる一方、実際のてんかん患者の脳の状態を十分に表せていない面もあります。そこで、ラットの扁桃体に電極を入れて、微弱な電流を毎日繰り返し流すことで神経回路の再編が起こり、患者と同様の「てんかん焦点」を形成することができます。この方法は、電極の位置がずれたりなど、技術的に難しい面があるため、これまではあまり多く行われてきませんでした。ところが最近、高機能になった医療材料を使うことで、ラットに電極を正確に挿入固定し、長期間記録を取ることが簡便かつ正確に行えるようになったのです。

脳の病気のメカニズム解明に期待

これまで医療現場では、てんかんのある患者はストレスや睡眠不足で発作を起こしやすいことは知られていました。ラットに電極を付けた状態でさまざまに生活条件を変えることにより、その経験的な知識が正しいことが証明されました。
今後はこの実験方法で、新しく開発されたてんかん治療薬や手術法の検証も、より患者の実態に近い状態で行うことができます。また、てんかん焦点ができるメカニズムや発作が起きる条件など、てんかんのメカニズムについても詳しい研究が行われる予定です。

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公立小松大学 保健医療学部 臨床工学科 教授 北浦 弘樹 先生

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病態神経科学

メッセージ

進路を考えるときに「大学受験までにやりたいことを見つけなければ」と焦るかもしれませんが、大学に入ってから見つかることも多いので、あまり悩まなくてもいいと思います。私自身、恩師や周りの研究者との出会いによって流れが変わったり、やりたいことが二転三転したりしながら道をつくってきたので、確固としたやりたいことが見つからないとダメとは思いません。高校生で、将来を見通して計画通りに進んでいく、ということは現実的に難しいです。肩の力を抜いて考えてみましょう。

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