発達・行動面に心配のある子どもの支援方法を「臨床的」に学ぶ
「発達のつまずき」は、育てかたのせい?
言葉を発するのが遅い、動きがぎこちないなど、乳幼児期の発達に心配なことがあると、世間には「保護者の育てかたが下手」「言葉かけが足りない」「愛情が足りない」などと言う人がいます。しかし、通常の子育てをしていれば、よほどのことがない限り「育てかたや環境」が理由で「言葉の遅れ」や「運動発達の遅れ」が生じることはありません。発達・行動面の心配の原因には、むしろ「子どもの育つ力」に理由がある場合が少なくありません。そうした子どもたちの中には、知的障害、自閉スペクトラム症、ADHD、LDなど、発達障害の診断を受ける子どももいます。
「発達特性」に配慮した環境を
「子どもの育つ力」に理由がある場合には、「発達特性」に配慮した養育支援が重要です。具体的には、日常生活を通して自然には身についていきにくい力の有無を把握します。例えば、「落ち着いて座っていられない」という子どもには、「気が散りやすい」「注意が移ってしまいやすい」「見るべき所を見ずに、気になる所を見てしまう」特性も考え、環境からの刺激を構造的に整理したり、必要な情報を視覚的に集約して伝えたりする接し方を意識します。
「愛着形成」を大切に、子どもが安心できる発達支援を
「育てかたや環境」も実は大切です。適切な養育環境を下支えするのが「愛着形成」です。愛着は、基本的に、こわくて不安な時に、保護者や保育者など信頼できる人にくっついてしがみついて安心することです。子どもはひとりで、色々なことをやりたがります。そして、自分ひとりでは、うまくいかないことを何度となく経験します。泣いて抱きついて来るとき、やさしく穏やかに受け入れ、弱った気持ちを回復してあげるなど、「子どもが守られていると感じられる関わり」を意識した養育支援が必要です。すなわち、発達に心配のある子どもの臨床と保護者への養育支援に携わる場合には、発達特性と愛着形成を大切にする援助方法を臨床的に学ぶことが大きな力になるはずです。
参考資料
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岩手県立大学 社会福祉学部 人間福祉学科 教授 佐藤 匡仁 先生
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