「犯罪」はどうすれば防げるのか?

「犯罪」はどうすれば防げるのか?

デザインで犯罪を防ぐ

犯罪者を外見で見分けることはできませんが、危険な場所なら見た目で判断できます。そのテクニックが「入りやすい」「見えにくい」というキーワードです。危険な場所は「入りやすく見えにくい場所」、安全な場所は「入りにくく見えやすい場所」です。この視点からデザインされたのが、アメリカ生まれのコンビニで、出入口は1カ所なので「入りにくい」、道路側の壁を全面ガラス張りにしたり、ドア近くにレジを置いたりしているので「見えやすい」のです。でも日本では、こうした犯罪機会論(「機会なければ犯罪なし」という発想)が広まっていないので、大きなポスターを張ったり、店員が顔を見て挨拶しなかったりして、「見えにくく」なっているコンビニもあります。そこでは万引きや強盗が起こりやすくなります。

防犯常識のウソ

「人通りの多い道は安全」とよく言われます。でも「人が多い場所」は、犯罪者にとっては「獲物が多い場所」です。高校生が被害にあうケースの多くも、コンビニや駅前といった「人通りの多い場所」から犯罪は始まっています(物色→尾行)。このほかにも、「街灯があれば安全」「防犯カメラは抑止力になる」「携帯で話しながら歩けば犯罪者は近づけない」「見晴らしのよい場所は安全」などといった間違った常識がまかり通っています。日本でも、世界標準の犯罪機会論を普及させる必要性があります。

安全な生活を作る学問

犯罪学は、自分の身や家族の安全を守るだけでなく、将来どんな仕事についても生かすことができます。警察官、自治体の公務員、警備会社はもちろん、学校であれば子どもの防犯教育(地域安全マップづくり)、建築や不動産であれば建物や街のデザイン、食品や日用品であれば製造ラインでの異物混入の防止、映画や小説であればリアリティのある作品づくり、一般の会社であればストレスがたまりにくい職場づくりなど、犯罪学と無関係の仕事などありません。

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先生情報 / 大学情報

立正大学 文学部 社会学科 教授 小宮 信夫 先生

立正大学 文学部 社会学科 教授 小宮 信夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

犯罪社会学

メッセージ

私は「犯罪社会学」を研究しています。私たちはどうすれば犯罪に巻き込まれずに生活できるのでしょうか。「不審者に気をつけろ」と言われますが、すぐに怪しまれるようなマスクやサングラスをしている犯罪者はほとんどいません。
重要なのは、「人」ではなく「景色」です。犯罪者は景色を見て、犯罪をするか、しないかを決めています。「どんな場所なら犯罪をしたくなるのか」、立正大学ではそうした研究をしています。日本各地や海外で、現場を歩いて、実際に景色を見て、考えていきます。ぜひ一緒に勉強しましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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立正大学に関心を持ったあなたは

立正大学は、9学部16学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2022年で開校150周年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。