グローバル化する世界経済の中での日本の立ち位置は?
日本は加工貿易で成り立っている国?
日本は主に「加工貿易で成り立っている国」、という印象を持っているのではないでしょうか。海外から資源を輸入し、それらを製品に加工して輸出しているというイメージです。ニュースや教科書などで見かけることの多かった、貨物船に積まれる輸出用の自動車が港にずらりと並ぶ映像や写真は、そうしたイメージを象徴するものでした。
アメリカのIT産業も、事業を海外委託
しかし最近の日本では、加工貿易の占める割合は少なくなっています。経済のグローバル化にともない、中国や東南アジア諸国など海外で生産を行う日本企業が増えました。また、こうした国際分業にともなって、製造業の会社といっても、広い意味でサービス業的な仕事が増えてきています。
この傾向は、ほかの先進国でも同様です。例えば、アメリカのIT関連企業の多くが、国内で生産するのではなく、インドの企業にソフトウェアのプログラミングの仕事を外注しています。英語を公用語とし、教育水準も高いインドは、こうしたITの仕事に優位性があると言えます。ソフトウェアは海外で生産し、それを活用したサービスをアメリカ本国の企業が提供するという構図です。
貿易収支は黒字がいいとは限らない
人、モノ、そして情報が活発に行き来するグローバル経済では、国家間の垣根が以前より低くなっていることは確かです。それでもある程度の地域差は残り続けるでしょう。これからの日本の経済は、コスト面よりも品質や満足感など、さまざまな付加価値を持つ商品やサービスを展開することで、一定の存在感を保ち続けることになるのかもしれません。その場合、国の貿易収支が黒字になるかどうかという点は、必ずしも重要なことではありません。国内でひたすら節約した結果としての黒字より、自ら進んで選択した経済活動が国内で行われた結果として少々の赤字を続けられるのであれば、深刻な問題ではないとも言えるのです。
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先生情報 / 大学情報
一橋大学 経済学部 教授 冨浦 英一 先生
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