無責任な不祥事を防ぐのに有効な社会心理学
1+1が2にならない
大人数が同じ仕事をすると、少しずつ気が緩み、必ず「手抜き」が出てきます。一人である仕事をしているときに出している力と、二人でその仕事をしているときの力を比べると、二人でしているときは2倍になっていません。手抜きで済んでいるならまだいいのですが、それが進むと「無責任」になります。心理学者のラタネとダーリーが行った実験に「冷淡な傍観者」というものがあります。
責任ある行動を阻むもの
「都会におけるストレスの実験をする」と言って、若い人を集めてアンケートに答えさせます。途中で、実験者は部屋の外に出ます。すると、空調設備から白い煙が出てきます。部屋に一人で残されている場合は、「煙が出てきました」と、すぐに言いにきます。しかし、部屋に二人、三人と回答者がいる場合はこうはなりません。
煙が出ていることを異常事態かどうかと判断するのに、周りを見るのです。「これは異常事態なのか、それともここでは当たり前なのかな」と不安に思って隣を見ると、隣の人は平然とアンケートに答えています。しかし実はその人も同じように不安なのですが、平常を装って周りの反応を確認しているのです。その結果、お互いに不安なのに、お互いに「何も起こっていない」というシグナルを送りあうことになります。人間は、一人ではなく集団でいると、異常事態に気づき、責任ある行動をとらなくてはならないと判断するまで時間がかかるのです。
この発見は、企業経営にも役立ちます。企業で不祥事や事故が起こらないようにするためには、「二重のチェック体制」を作るとともに、担当者には「二重チェックをしていない」と思わせておく必要があります。そうでないと、「何か問題があれば、もう一人のチェック担当者が騒ぐだろう」という依存心を互いに持ってしまい、問題の発覚が遅れる可能性があるからです。
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