農家さんのために牛の繁殖能力を高めたい!
牛の妊娠は大イベント
牛乳を作るには、牛を妊娠させ、分娩させる必要があります。牛を妊娠させるために、人間が人工授精を行います。しかし、人工授精により牛が妊娠する確率は40%ほどしかありません。妊娠しなかった場合、次の発情を迎えるまでの約3週間は原則妊娠できません。妊娠が遅くなると、エサ代などがより多くかかってしまうため、農家の支出が増えてしまいます。畜産農家にとって妊娠は大イベントなのです。
着床能の高い受精卵を作りたい
牛を妊娠させるための手段には、人工授精以外に受精卵移植という方法があります。受精卵を母牛の子宮に移植する技術です。体外受精技術を用いることで、その受精卵を体外で作ることができます。受精卵が子宮に着床する能力(着床能)は、受精卵ごとに異なります。その能力が高い受精卵を作るための研究が行われています。注目されているのは、体外受精を行うまでの過程です。体外受精を成功させるには、卵子を成熟させる必要があるのですが、体外受精を行う際の卵子の成熟度合いにより、体外受精の成功する確率が変わってきます。体外受精のベストタイミングを把握するために、卵子の見た目や大きさなどの情報を活用し、卵子の成熟度合いを推定する基準を作っています。
子牛の繁殖能力は母牛の胎内で決まる?
卵巣内には原始卵胞という卵子の種のようなものがあり、この数が多いほど繁殖能力は高いと言われています。その数は生まれた時点ですでに決まっており、胎子期の母牛の状態に左右されます。胎子の原始卵胞が作られるのは、胎内にいる約5カ月目までと言われており、その時期の母牛のテストステロン(いわゆる男性ホルモン)の血中濃度が高いほど、子牛の卵胞数が減りやすくなることがわかってきています。母牛がどういう状況になると、テストステロンの血中濃度が高くなるのかはわかっていません。この点を明らかにすることができれば、母牛の飼養方法に関する新しい情報を提示することができ、農家の生産性向上につなげることができます。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 獣医学部 獣医学科 准教授 古山 敬祐 先生
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