人の行動や優しさを引き出す「弱いロボット」とは?

人の行動や優しさを引き出す「弱いロボット」とは?

完璧ではないロボットに人はどう対応するか

近年は介護や家庭、コミュニケーションの領域で活躍するロボットが登場し、高性能化が進んでいます。人とロボットとの関係をみると、機械やロボットが高機能になればなるほど、「もっと静かに、もっとスムーズに」など、人の要求は「もっともっと」と高くなる一方であることがわかっています。ところが、例えばロボット掃除機は、物や段差があると動けないことがありますが、人はロボット掃除機がスムーズに動けるよう部屋を片付けるといった行動をするものです。
つまり、ロボットが完璧なほど人は傲慢(ごうまん)になりやすく、完璧でなければ人の配慮や優しさ、工夫や行動を引き出す道具にもなり得ると言えるでしょう。

人の行動や優しさを引き出す「弱いロボット」

完璧でないローテクノロジーな、いわゆる「弱いロボット」と人が一緒にいるとどうなるでしょう。自らゴミを拾えない3つのゴミ箱ロボットがヨタヨタと小学校の校庭をさまようと、子どもたちは動きを見守り、ゴミを拾って分別しながら3つのゴミ箱に分けて入れ始めます。教室に「ヘンテコな返答をするロボット」が1台あると、子どもたちはロボットをサポートし始めます。「自分より弱い存在がいる」ことで、子ども自身の自己肯定や自信の形成につながっています。また、他愛のないおしゃべりをするだけの3つのロボットを高齢者施設に置くと、高齢者は自然に会話に参加し、ロボットが困ったら助けたりします。

これからの人とロボットとの共生

人は、誰かの役に立ったり、手助けできたりすると喜びを感じます。「弱いロボット」には、他者への関心やいたわりを育てる力があるのです。人とロボットとのコミュニケーションや共生を考えた時、こうしたロボットがあってもいいのではないでしょうか。これが評価され、商品化される予定もあります。高性能さや強さが求められる時代ですが、「弱さを認める」新しい価値観を示すことができるのも「弱いロボット」なのかもしれません。

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豊橋技術科学大学 工学部 情報・知能工学系 教授 岡田 美智男 先生

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情報・知能工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今、「ロボットは便利で高性能であるべきだ」という考えが主流になっています。でも、本来はいろいろな価値観があっていいはずです。「おもしろくて、かわいいだけ」「一人じゃできない」といったローテクノロジーなロボットがあると、人との関わりはどうなるのか? そんな、新しい価値観を作ることがとても大切な時代であるような気がします。いろいろなことを見聞きし、自由な発想で考え、思いっきり行動できるのは、学生時代だけです。この研究室で一緒に新しい価値観を生み出し、世の中の流れを変える一石を投じてみませんか。

先生への質問

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本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。