日本の植民地時代の韓国で、若者たちはどんな学校生活を送っていた?
植民地支配下の韓国の若者たち
20世紀初頭の朝鮮半島は、日本による植民地支配を受けていました。当時、現地の多くの学校では、日本人教師が日本語で授業を行っていました。韓国人社会の中でも裕福なエリート層の家に生まれた若者たちは、そうした学校に通って勉強していたのです。当時の若者たちはどんなことを考え、どのような学生生活を送っていたのでしょうか。
ある男子中学生の日常と学校生活
韓国内の古書店で発見された史料の中に、1930年の頃に書かれた日記があります。それは、当時14、5歳だった韓国人の少年の日記で、彼は日本語で教育が行われている中学校に通っていました。日記に綴(つづ)られている彼の生活は、テストの結果に喜んだり、学校で友だちと喧嘩をしたり、図書館で勉強したり、当時日本で刊行されていた雑誌『キング』を読むなど、本当にごく普通の中学生の男の子らしい日常風景です。
同時に、日記の記述には、日本による支配を感じさせる部分が見え隠れします。授業の一環で軍事教練が行われたり、早朝から軍事演習の見学に出かけたりもします。しかしこの日記を読む限り、彼の生活には、日本による支配とそれに抵抗する韓国人という一面的なとらえ方だけでは理解できない世界が広がっていることも事実です。
歴史を大枠で見ることと、個別の視点を持つこと
歴史を大きな枠組の視点から俯瞰(ふかん)的にとらえるだけでなく、この少年の日記のように個別の具体的な問題を示す史料を研究することも大切です。政治家などによって行われる決断は、社会そして世界を大きく変化させるという意味でとても重要です。一方で、政治の大きな変化とは無関係かもしれない個人の記録は、その時代の空気をより鮮明に私たちに伝えてくれます。このような2つの視点を持ちながら、韓国と日本の歴史と関係性をひもといていくことは、近代史の研究を進めていく上で重要な手がかりとなりうるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 外国語学部 外国語学科 教授 原 智弘 先生
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