イギリスの産業革命とインド綿

イギリスの産業革命とインド綿

ウールを駆逐したインド綿

イギリスでは、産業革命以前、羊毛製品の製造が盛んでした。
しかし18世紀になるとイギリスの織物製造の中心がウールからコットンに変わっていきます。そのきっかけを与えたのはインドでした。17世紀から18世紀頃、イギリスはインドから、お茶や綿布を輸入していました。その輸入品のなかに手織りの綿織物もありましたが、これがイギリスで大ブームとなりました。着心地がよく軽くて、柄もきれいだったため、一気に普及したのです。あまりにブームになりすぎて、イギリス本来の羊毛製品が売れなくなるほどでした。それに脅威を感じた羊毛業者がインド綿布の輸入禁止を政府に働きかけ、禁止措置をとりました。ところが、一度インド綿布のよさを知ってしまったイギリス人は、輸入ができないなら自分たちでつくろうと立ち上がります。それが、綿製品の大量生産をもたらす産業革命のきっかけになったと言われています。

歴史を変えた綿布の着心地のよさ

18世紀の中頃、イギリスで水力紡績機が発明され、多量の綿糸をつくりだすことに成功し、大量生産を可能にしました。これが本格的な工場制綿工業の始まりと言われています。イギリスは、大量生産で安価な綿布がつくれるようになり、今度は逆にインドに輸出するようになりました。半強制的にインドに輸出したため、インドの綿業は大きな打撃を受けました。19世紀の半ばになるとインドでも自動織機による近代的な綿業が勃興しますが、技術はイギリスから学ぶという皮肉なことになりました。日本の近代的綿業はインドより少し遅くスタートしますが、やがてインドや中国など世界各地に綿布を輸出するほど盛んになります。
産業革命はイギリスの近代的な綿業から起きましたが、そのきっかけのひとつは、実は、インドの手織りの綿布だったのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名古屋市立大学 経済学部 マネジメントシステム学科 准教授 木谷 名都子 先生

名古屋市立大学 経済学部 マネジメントシステム学科 准教授 木谷 名都子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

メッセージ

15~16歳のころは、将来何をやりたいというのが決まってないというより、わからない人の方が多いと思いますが、それはそれでいい。大いに悩んで迷っていいのです。ただ一つ、知的な好奇心を大事にしてほしいです。本でも雑誌でも、テレビ番組でも人の話でもいい、何かのきっかけで、「アッこれ面白い」と思うことが高校の3年間でまったくないということはないはずです。面白いと思ったらそれを大事にしてほしい。それがきっかけで、そこからいろいろな可能性が広がっていくかもしれません。自分の好奇心を大事にしてください。

名古屋市立大学に関心を持ったあなたは

名古屋市立大学は、医学部・薬学部・経済学部・人文社会学部・芸術工学部・看護学部・総合生命理学部の7学部とそれぞれの研究科およびシステム自然科学研究科からなる総合大学です。
大学の最も重要な使命は、優れた教育を通して地域および国際社会で活躍する有為な人材を育てること、すなわち「人づくり」です。知識の詰め込みではなく、自ら課題を見つけ、その解決に正面から取り組む姿勢を養うため、本学では、学生と教員の触れ合いを大切にし、演習、実習を重視する少人数教育を行っています。