古代語の解読を通じて現代の価値観を相対化する
インド哲学とは: 古代インド文献学
斯学を正確に表現すれば「古代インド文献学」です。斯学の仕事は、大まかには、サンスクリット語などの古代インド語の辞書や文法書の作成、古代インド文献の正確な翻訳、そしてその文献に現れる文化・思想の再構築です。文献に特化した考古学とでも言えるでしょうか。宗教思想の考察や現代を生きるガイドラインの作成をめざす様な宗教学を応用研究とすれば,文献学はそれを支える基礎研究とも言えそうです。
古代インドの世界
古代インドの世界は一般にはあまり知られておらず、独特の魅力を持っています。例えば古いバラモンの宗教世界を覗いてみると、まずは神と人とのgive-and-takeな対等関係に驚くでしょう。人間は神々に相応の対価を払い、「〜せよ」という命令法で望みを伝えます。気弱な態度では見下されるのです。また、インド初期仏教は今の感覚で言う「慈悲」のイメージとはかけ離れた所にいます。死を目前に控えた修行者がブッダとの面会を望んだところ、ブッダは自身を指して「この汚れた身体を望むとは何事か」と叱ったとの逸話がある程です。これらは一見して分かる世界ではありませんが、ここには彼らなりの論理があります。それを学ぶことは、我々が当たり前と思っている自身の価値観を問い直し、相対化するきっかけとなるでしょう。価値観の相対化は多様な社会への適用を容易にします。
斯学はあなたにとって何の役に立つか?
斯学では、古代世界を再構築する際、何処までもファクト・ベースで議論します。如何なる大学者が如何に重厚な論理を展開しようが、それが文献中の事実に基づくのでない限り、我々にとっては無価値です。逆に事実を正確に指摘しさえすれば、初学者でもベテランと同じ舞台に立てます。斯学における学びを通じて身につく、膨大な文献の海から緻密な解読を通じて事実を見抜き、それを積み重ねて1つの概念にまとめ上げ、ファクト・ベースで議論する力は、情報の海と化したこの社会を生きていく上で強力な武器となるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 文学部 インド哲学専修 講師 名和 隆乾 先生
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