21世紀に求められる政策とは
ハードの次はソフトを
明治維新以降、日本は近代国家を形成するにあたり、さまざまな社会の基盤整備を行ってきました。いかに広い道路を作り、住宅地や市街地、上下水道を整備していくかなど、もっぱら物的な基盤を整えることに主眼を置いてきたのです。しかし都市政策の目的は、都市で生活する人間をいかに豊かに、幸せに暮していくための課題解決にあります。それはルーティーンの生活のためだけではなく、例えば災害のような非常時においてもいかに生活を支えるのかといった問題もあります。それにはハードな物的基盤を整備するだけでなく、福祉や医療といったソフト面もサポートしなければなりません。ある程度、ハードが整った社会ならば、今度はソフトな面の整備に力を入れ始めるのは必然なのです。
時代と共に移り行く課題
日本が本腰を入れて都市政策に取り組むようになったのは、1960年代頃からです。当時の政策は、主に高度経済成長にともない発生した諸問題を解決するためのものでした。しかし、都市化や産業変動にともない政策課題は変わっていくものです。また、現代の社会問題の特徴は少子高齢化や人口減少、環境対策などどれも世界が一つになって取り組まねばならない問題であり、一つの国や自治体のアプローチで解決できるものではなくなっています。
「財政」は世界共通の悩み
もちろん各社会が抱える課題は地域や社会によって異なります。しかし2008年の「リーマン・ショック」以降、世界のどの国も財政問題を抱えています。もともと1980年代から、国も自治体も行政改革をすすめてきました。これは日本だけでなく、サッチャー政権下のイギリスなど、世界的に同じ傾向にありました。今の状況での財政緊縮は難しく、結果として医療や年金、保険など、あらゆる点にしわ寄せがきています。民間企業のように、国も地方自治体もこれまで行ってきた財政運営を見直し、改革をすすめていく必要に迫られているのです。限りある財源をどの政策に配分していくか、政策形成の担い手はその力量を試されているのです。
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