講義No.08605 食物・栄養学

「体の骨」と「超高齢社会の屋台骨」を支える、栄養学

「体の骨」と「超高齢社会の屋台骨」を支える、栄養学

新しい国民病「ロコモティブ症候群」

メタボリック症候群や、日本人に多いがん、認知症、腎臓病、歯周病などは国民病と言われています。その中で「ロコモティブ症候群(運動器症候群)」は最近よく耳にする新しい国民病です。これは関節や骨、筋肉などが加齢とともに弱って動けなくなる病気で、予防には栄養学も欠かせません。
2015年、日本の人口に65歳以上が占める割合は26.7%になり、超高齢社会の基準である21%を大きく上回り、社会問題となっています。超高齢社会では、膨大な医療費が国の財政を圧迫しています。ロコモティブ症候群をサポートする栄養学は、個人の体の「骨」を支えるだけでなく、社会の屋台骨もサポートするものです。

超高齢社会と「骨粗しょう症」

ロコモティブ症候群の要因の一つは、骨密度が低くなり骨が脆くなる「骨粗しょう症」です。骨は体を支えるだけの組織ではありません。骨にも細胞があり、脳や心臓に信号を送るホルモンや血糖をコントロールするホルモンを分泌して、体の調子を整えています。新陳代謝が行われており、古くなると破骨細胞により溶かされ(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作ります(骨形成)。骨の再構築は生涯続きますが、加齢や、女性であれば、閉経後女性ホルモンの減少で、骨吸収作用が活発になるため、骨粗しょう症になりやすいのです。若いうちから骨密度を保つ食習慣を身につけることや運動習慣が大切です。

血管の健康を守っていく栄養学

一方、65歳以上の高齢者の多くは、血管が骨のように硬くなる「血管石灰化」がみられ、超高齢社会の大きな問題です。心臓からの血液を全身に送る動脈が石灰化により柔軟性を失い、ガラスのようになり破裂する原因となるのです。それを助長させる疾患が腎臓病や糖尿病です。脳卒中や大動脈瘤(りゅう)破裂といった血管の疾患で死に至るケースは多く、管理栄養士の指導する適切な食事によって血管石灰化を抑制していくことは、多くの生活習慣病にも効果が期待されています。

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高知県立大学 健康栄養学部 健康栄養学科 准教授 竹井 悠一郎 先生

高知県立大学 健康栄養学部 健康栄養学科 准教授 竹井 悠一郎 先生

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栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「オンリーワンの栄養士をめざし、栄養をサイエンスしよう」、というのが私のモットーです。高知県立大学健康栄養学部では、栄養学はもちろん、食品学、調理学、給食の経営、公衆衛生学、地域との連携などいろいろな分野を学ぶことができます。私の専門は臨床栄養学で、主に病院と関わる栄養士を育てています。
医学と栄養学、私の研究テーマの一つである歯学なども組み合わせ、ほかにない栄養学を教えます。科学的で、オリジナルな発想を持ち、将来、社会に貢献できるような栄養士を育てるのが目標です。興味があれば、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

高知県立大学に関心を持ったあなたは

高知県立大学は、文化学部、看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部の4学部で構成しています。高知県は全国と比較して、高齢化で10年、人口減少で15年も先行しています。少子高齢化社会や南海トラフ地震対策など山積する課題を乗り越えて、未来の社会をどう形成するかに、学生と教職員は真剣に取り組んでいます。全学生が地域で活動し、地域の人々とともに学びあう教育に力を入れており、卒業後には、学部で身につけた専門知識を生かして地域で活躍できる人材となることをめざしています。