屋根裏から床下まで、建築探偵が行く!
「文化財」の指定はどうやって決めるの?
国の文化財を指定するのは文化庁ですが、指定を受けるまでには、文化財がある地域の建築士などの専門家に調査を依頼し、報告書を作成し、保存会などができたうえで申請するといったさまざまな地道な作業が必要です。このように文化財の調査には地元の建築関係の学部や学科を持つ大学や専門学校などが中心的に関わり、調査にかかる期間は平均1~2年ほどです。
年代を確定するにはまず屋根裏へ?
調査でまず重要視するのが、その建物がいつ建ったのかということです。文化財になるには、建って50年以上という1つの基準があります。そこで、建築の専門家たちは、屋根裏に上がっていきます。手袋をはめ、懐中電灯を持って帽子をかぶり、ちょっと怪しい建築探偵のようなこの調査、天井板を踏み外して転落しないよう、抜き足差し足です。
屋根裏では、棟札(むなふだ)というものを探します。これは大工の棟梁(とうりょう)が建築の安全を願い、無事に基礎工事が終わった時、屋根を支える棟木(むなぎ)に取り付ける札のことです。建築年と工事関係者の名前などが書かれています。時には大工さんの落書きが思わぬヒントになることもあります。○○村の○兵衛とか、年号などが書かれていることがあるのです。
ハイカラだった植木枝盛の書斎
また、歴史的に貴重な調査のチャンスもあります。自由民権運動の指導者だった植木枝盛(うえきえだもり)の書斎を復原・移築したときのことです。枝盛の書斎は、当時の記録ではハイカラな「ピンク色の壁」だったようですが、移築の時点では改築されてしまっていて痕跡がありませんでした。ところが、床下に潜ったら、なんとそこにピンク色の壁の一部が残っていたのです。高知市立自由民権記念館に移築した書斎は、ピンク色の壁が再現されました。
このように、屋根裏の棟札や室内のデザイン、後世の修理の痕跡などから多くの発見がある文化財調査は、文化財の指定だけでなく、その保存と活用に貢献しているのです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 三浦 要一 先生
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