世界文学の研究で、世界平和の実現も夢ではない!
文学をとらえる視点の変化
「世界文学」と聞くと、世界文学全集を連想するかもしれません。20世紀前半までの文学研究は、それらを読んで見識を広めるだけでしたが、現代は違います。イギリス文学、アメリカ文学、ロシア文学などは、自分たちこそ世界の中心だと思って世界を動かしてきた強国の価値観の表出です。こうした偏見によって表された世界が、英米露の文学だったというのが現代の認識です。
ローカルを超える文学作品
かつて、文学は作者のもので、作品の問いかけへの答えも作者が持っていました。読者はその価値観に寄り添って読めばよかったのです。それが20世紀後半、根本的に変わり、読者、つまり誰が読むのかが重要になりました。そもそも文学作品は「ローカル」です。文学作品は、ある時代に、ある地域の文化や思想の中で育った人によって書かれます。
しかし、ローカルな文学作品が地域や文化の境界を越えて読まれる時、ローカル性が一部捨てられ、新たな価値観が付け加えられます。例えば、中東の人が村上春樹を読む時、日本文化を知らなくても中東の文化や価値観に基づいて理解します。それが解釈であり、日本人読者と中東の読者の解釈は同じではありません。
世界文学の解釈が平和を導く可能性
世界文学という考え方をメジャーにしたのは、デイヴィッド・ダムロッシュの『世界文学とは何か?』という評論です。本来はローカルな文学作品が世界文学として読まれると、作者すら想像していないような解釈が異文化によって付け加えられたりして、解釈の対立が必ず生まれます。歴史的には、この対立を放置したり、攻撃したことで命が奪われることもありました。宗教戦争、中国の文化大革命などです。
対立はなくならなくても、どう乗り越えようかと考え始めれば、そこから異文化への理解が始まり、異なる価値観が融和し、双方が納得できる解釈が生まれるかもしれません。古代から現代までの幅広い文学研究は、世界をどうとらえていくのかを考える格好のツールなのです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 鳥飼 真人 先生
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