見えない物質を「見える化」し、室内環境を改善!
空気中に存在するさまざまな物質
生きていくために空気は不可欠です。その空気を採取し測定してみると、浮遊粉じんや有毒ガスなど、人間の健康に影響を及ぼしかねない物質が含まれていることがわかります。空気に限らず、土壌や水中など、私たちを取り巻く環境にはさまざまな物質が存在していますが、そこに潜む有害因子を「見える化」し、環境改善に生かそうという研究が進んでいます。
環境衛生の視点
床や壁などの汚れの原因となる微生物を空気中から探し出すことで、室内の環境改善に役立てることができます。例えば、調理室など衛生管理の徹底を求められる場所では、微生物の種類を特定することで、汚れそのものを持ち込まない方策も立てられます。土に由来するものであれば、調理室の入り口で履物を交換すれば侵入を防げます。また、汚れがひどい場所を特定し、重点的に清掃することも可能です。
同じく温度や湿度も測定して「見える化」できます。例えば、国が定める基準では、教室の温度は「17℃以上、28℃以下」、湿度は「30%以上、80%以下」が望ましいとされています。これらについても、熱中症の予防や、より快適に学習する、という環境衛生の視点も合わせて設定を考えてみることが必要です。
換気の指標はCO₂濃度
学校の授業でも、ウイルス感染予防策の1つとして室内の十分な換気が求められるようになりました。ただし、窓や扉を開けると外や隣室から声が聞こえることもあり、季節によっては冷暖房も必要ですから、ずっと開放しておくのは得策とは言えません。国の規定では、室内のCO₂濃度を1000ppm以下に保てばよいことになっており、測定機器を設置して室内のCO₂濃度を測定して数値化し、換気の指標にする取り組みも進んでいます。
見えないものを「見える化」し環境改善に生かす試みは、社会環境が複雑化する現代の公衆衛生学において、これからますます重要になります。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 小林 淳 先生
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