わかるのは人数だけではない! 人口から地域を読み解く
人口が増える地域と減る地域
2000年代の東京都23区では、若い世代を中心に人口が増えています。特に、30~40代の子育て世帯の増加が大きいです。一方で、かつて林業で栄えていた和歌山県古座川町では若い世代が流出し、町全体の人口も減少し続けています。2つの地域は、なぜこのような状態になっているのでしょうか。
人口に反映される人の意志
2000年以降の23区内では、バブル崩壊後、企業が手放したり工場が海外に移転したりした土地に多くのマンションが建設されました。すると、これまで広いスペースを求めて郊外に流出していた子育て世帯が便利さなどを求めて23区内に住むようになりました。都心のマンションは高額であるため、共働きの世帯が多いと考えられます。また、若い人を中心に、一人暮らしも多いです。
一方、和歌山県古座川町の場合、土地はあっても働く場所が少ないため、若者が流出しています。高齢化も進んでいて、出生者数よりも死亡者数のほうが多く、町の人口は減少しています。しかし、最近では田舎暮らしに憧れて都会から移住する人が増えています。
より良い大学や職場を求めて若い人が都会に集まります。結婚して子供ができると広いスペースを求めて引っ越します。都会では一人暮らしを続ける人も多いですが、田舎暮らしに憧れて農村に移り住む人もいます。人はその時々の必要・欲求に応じて住む場所を変えています。その積み重ねが地域の人口に現れているのです。
人口分析は診断
このように地域の人口には、人々が意志を持って行動した結果が反映されています。細かく分析すると住民の生活の様子や、地域の雰囲気や課題もわかってくるのです。
人口分析は、その地域の現状を知る方法のひとつです。医療で例えるなら、症状の診断をするのが人口研究の役割だといえるでしょう。地域の人々はその診断結果をもとに治療を行います。現状やそこに至る歴史的な過程を明らかにして、地域の未来を切り拓いていくためのヒントを提供しようと、地域人口の研究が行われています。
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和歌山大学 教育学部 社会科教育 准教授 山神 達也 先生
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