アメリカ発のストリートダンスは日本にどう根づいているのか?
ストリートダンスはアメリカの対抗文化
ヒップホップダンスをはじめとするストリートダンスが、近年日本でも浸透し、多くの若者がダンスに取り組んでいます。大学のキャンパスでサークル活動としても取り組まれていますし、子どもがお稽古事として習いにいくこともあります。ストリートダンスは、もともとは、アメリカの都市においてマイノリティによる対抗文化(カウンターカルチャー)の表現として誕生しました。若者が、社会への不平や不満をぶつける手段の一つだったわけです。ところが、日本で定着しているストリートダンスは、今や健全なダンスの1ジャンルとしてまじめに取り組まれている印象があります。そこには、日本のダンス文化、スポーツ文化の独自性が垣間見えます。
見えてくる文化の違い
日本には、盆踊り、よさこいなどから、近年の動画配信における「踊ってみた」動画まで、さまざまなダンス・踊りの文化があります。その多くは、みんなで同じ振り付けを音楽などに合わせて踊るというものであり、みんなが同じ行動をとるというのが、日本文化の一つの特徴でもあります。大学のサークルなどで行われるストリートダンスも、みんなで練習して、みんなで上達していこうという慣習の中に取り込まれていると考えられます。
一方で、アメリカにおけるストリートダンスは、日本ほど、「努力」や「継続」、「集団性」を大事にするものではありません。個人主義の強いアメリカでは、組織を作って協力し合い、みんなで等しくレベルアップしていこうという発想があまりないのです。こうした比較から、アメリカと日本との、ダンスやスポーツへの取り組み方の違いが浮き彫りになってきます。
抽象性を具体化させる社会学
社会学という学問では、民族性などといった抽象的なものを取り扱いますが、食べ物、ファッション、踊りのような、具体的な形に見える対象を研究することで、そこに意味を見出すことができます。ダンスという具体的なものを観察していくことで、集団への帰属意識など、個人と社会との関係性が見えてくるのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵大学 社会学部 社会学科 准教授 林 玲美 先生
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