町を元気にする ~社会調査で住民の思いをリサーチ~
人間関係を築いて地域社会を元気に
20世紀末のアメリカで「ボウリング・アローン」という現象が注目されました。普通ならば友人や家族と楽しむはずが、一人で黙々とボウリングをする人たちが出てきたのです。このように社会関係の希薄な人たちが増えたのには、コミュニティが崩壊しているからだと考えられました。そこで地域社会の人間関係を重視し、構築することによって、地域を活性化するという「ソーシャル・キャピタル」という概念が生まれたのです。
もうひとつの現実を再現する社会調査
地域社会を考える場合、町づくりに対して、住民がどのような思いを持っているかを現象としてとらえておく必要があります。なぜなら人は誰しも、価値観や正誤の判断、規範などがそれぞれに異なるもうひとつの現実、つまり「意味世界」を内面に築いているからです。そのようなもうひとつの現実や思いを再現していくための手段が社会調査なのです。調査にあたっては、調査結果を正しく読み取り、解釈する「調査リテラシー」が大切です。例えば、統計的に春と秋に交通違反が増えるのは、違反自体が増えるのではなく、交通安全運動週間で取り締まりを強化するからだと解釈できます。
調査する人もコミュニティの一員になる
アンケート票などを用いて数値化する「量的調査」に対して、インタビューなどを実施して相手の思いを再構成していくことを「質的調査」と呼びます。インタビューで大切なのは、相手が持っている意見を吐きだしてもらうのではなく、インタビューする現場でその人の思いが形成されるという認識を持つことです。つまり調査する側も、相手の考えを形成することに手を貸し、もうひとつの現実である「意味世界」をつくっていることになるのです。地域社会の調査では、客観的に観察するのではなく、自分もコミュニティの一員だという自覚を持ち、調査対象の人々の思いを解き明かし、分析に必要なデータを収集・提示していく社会的責任が求められます。
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