高齢化に負けるな~住民の参加とデータの活用で町は活性化する~
地方で進む高齢化と過疎化
日本では少子化などを背景に地方の高齢化、過疎化が進んでいます。こうした地域では、人が少ないため、民間の路線バスなどの公共交通機関や、食料品店などが撤退し、移動や買い物が不便になっていきます。このような環境では高齢者が外出をしなくなり、ねたきりや認知症につながりかねません。ねたきり高齢者の増加は今後の社会保障費の増大につながると予想されています。
地域の状況が把握されていない
民間の路線バスがなくなる際に、市町村がコミュニティバスとして路線を引き継ぐケースがありますが、うまくいかないこともあります。多くの場合、住民のニーズとサービスが合っていない、ミスマッチが起こっています。便数が少ない、走ってほしいエリアに走っていないといった具合です。
高齢者のねたきり予防のためのイベントなども、町の中心部でしか開催されないために、自宅から遠く参加できず参加者が少ない場合があります。調査によって状況が把握されておらず、住民参加が適切に行われていないことが原因です。
住民参加で利用者が増え、町が活性化する
逆に住民の声をしっかり汲み上げてうまくいっているケースもあります。愛知県知多郡武豊町(たけとよちょう)の高齢者向け事業「憩いのサロン」は、開催場所や活動内容を決める際に、自治体、近隣の大学関係者、住民らが集まり、調査データをもとに議論しました。住民自身が担い手となって町の各所に拠点をつくり、参加しやすくしたことで、利用者が多くなり評判も高くなっています。岩手県盛岡市では、地域住民と協働で買い物の不便さについて調査を進め、ルートを決めてバスの試行運行を行い、そのあとの本運行に結び付いています。高齢者のための事業やコミュニティバスなどの事業は、たとえ予算がかかっても、高齢者の外出が増えれば、ねたきりが減り、結果的に社会保障費の削減につながることも数々のデータから予測されています。地域の調査データや住民参加に基づく取り組みには、地域をよりよくする力があるのです。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科 准教授 平井 寛 先生
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