「心」と「脳」、その科学的な関係を読み解く!
脳活動をfMRIで測定・解析
脳は前頭葉・後頭葉・側頭葉・頭頂葉などで構成されています。fMRIは病院で体内の検査に使われるMRIを脳研究に応用したもので、ヒトの脳活動にともなう局所血流の変化を画像化するものです。ヒトがさまざまな認知課題を行う間、その脳活動をfMRIで計測することによって、認知機能と脳活動の関係を調べることが可能となります。
失われた機能の蓄積から始まった脳研究
fMRIが脳活動の研究に使われ始めたのは1990年代の初め頃です。日本人の研究者が、アメリカで原理を発見し、被験者に負担なく、脳の活動の変化を画像化できるようにしたものです。それまでは脳損傷の患者さんにおいて、損傷した脳の領野と障がいを受けた機能との関係を調べる研究が主流でしたが、脳の領野と機能の関係は大まかにしかわかっていませんでした。しかしfMRIが導入されて以降、さまざまな認知機能が脳のどの領域と関連するのか、脳機能マッピングの詳細な研究が進んできました。さらにこのfMRIによって、神経細胞で作られた脳内ネットワーク回路を通じて行われる脳活動全体の研究も進んでいます。
記憶のメカニズムを解明すれば
fMRIを使って、ヒトが考えたり記憶したりという「認知活動」を行う時の脳活動を調べると、大まかな神経回路ネットワークが見えてきます。記憶は大きく分けると「手続き記憶」と「宣言的記憶」からなっています。手続き記憶とは、歩く時の手順のように、無意識に刻まれた記憶です。宣言的記憶には、知識的な「意味記憶」と個人的な体験を表す「エピソード記憶」があります。
人間の「心」に深く関わるのが、エピソード記憶です。エピソードがどうやって記憶に残り、ヒトの心に影響を与えるのかを研究すれば、ヒトの脳と心的活動を解明する入り口になると考えられます。これは脳全体の仕組みやほかの臓器との協働の解明にもつながる研究です。
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先生情報 / 大学情報
高知工科大学 情報学群 教授 中原 潔 先生
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