細胞内のミクロの小宇宙を解き明かす
分子は細胞の中でギュウギュウ詰め
細胞の中にはたくさんの種類のタンパク質やDNAなどの生体分子が共存しています。水の中に漂っているこれらの分子たちは、まるでギュウギュウ詰めのプールのような混み合った状態の中で絶えずくっついたり離れたりしながら移動しています。分子はとても小さく素早いので、顕微鏡で倍率を上げても見ることはできません。これらの形や動きはコンピュータによるシミュレーションで解き明かされるのです。
コンピュータシミュレーションの仕組み
分子はさらに小さい原子が集まってできています。それぞれの原子がどれくらいの距離にあるとどんな力が働くかを、あらかじめ関数にしておきます。コンピュータにこれらの数式を入力すると、1つひとつの原子の周りにあるほかの原子との距離を計算して、その原子にどれくらいの力が働くかが導き出されます。この力がわかれば原子が次の時間にどこに行くかがわかります。想定した大きさの中のすべての原子について、それを膨大な回数繰り返すことで、パラパラマンガをめくるように分子全体の動きを追うことができるのです。こうしてコンピュータの中で、細胞内の分子が運動している様子を再現できます。
スーパーコンピュータで計算する
このようなシミュレーションは、膨大な量の演算を超高速で行えるスーパーコンピュータで計算されます。細胞内の分子シミュレーションは、コンピュータの性能が非常に進化したことから可能になりました。さらに、シミュレーションで得られた分子の形や動きを直感的に体験できるように、バーチャルリアリティ(仮想現実)を利用した観察システムも開発中です。
人間の細胞内の分子の形や動きがさらに解明されれば、薬の開発などにも応用が期待できます。非常に混み合った細胞の中で、薬の分子が目的のタンパク質分子の鍵穴のようなところに入っていくプロセスが分子レベルでわかれば、新しい薬の発見や副作用の予測などに役に立つでしょう。
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先生情報 / 大学情報
前橋工科大学 工学部 情報・生命工学群 准教授 優 乙石 先生
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