教員は授業中にどこをみている? テクノロジで視線を探る

教員は授業中にどこをみている? テクノロジで視線を探る

テクノロジで教員のノウハウを可視化

ICTなどのテクノロジを利用して、優れた教員による指導法のあり方が研究されています。例えば、言語にするのが難しい「教員の視線」の可視化です。教育現場では熟練した教師の高齢化による大量退職が始まっており、長年培われた専門的手法、いわゆるノウハウの喪失が深刻な問題となっています。こうした喫緊の課題を解決する上で、学習指導を支える貴重なノウハウの解明と伝承が進められています。

若手教員と熟練教員の違いとは?

具体的に表れる違いとして、例えば、どこに注目して何をみるのかという「視線」があります。学校現場での実験で、メガネ型のアイトラッカー(視線計測装置)を若手教員と熟練教員のそれぞれに装着してもらい、授業中にみていた箇所、視線を送った時間や順序などのデータの取得が行われました。その計測結果を比較分析すると、若手教員は発言をしている児童を中心に視線を送る傾向がありました。一方、熟練教員は挙手をしていない児童への注視頻度が高く、周辺視野において教室全体に目を配っていることが明らかになりました。言い換えれば、ひと握りの目立つ児童だけに気をとらわれずに授業を包括的に進めていくリアルなノウハウが確認できました。

視線に込められた意図を探る

もちろん、視線量や視線順序だけでは教員の意図がわからないので、それを補うインタビュー調査も行われました。その結果、例えば、若手教員は自分の意図に合った答えをもつ児童を探す視線をより多く送っていることがわかりました。また、熟練教員は「みる」という行為に、「あなたをきちんとみているよ」という承認の意味合いを含めていました。発言や挙手をしている活発な子には誰もが注目します。そうでない控えめな子や遅れがちな子にも視線を送ることで、みんなが授業の参加者なのだと態度で伝えようとしていたのです。こういったさまざまな手法をノウハウとして、若手教員や教員志望の学生たちが受け継いでいけるように、模擬授業などに取り入れられています。

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学習院大学 文学部 教育学科 教授 小原 豊 先生

学習院大学 文学部 教育学科 教授 小原 豊 先生

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教科教育学、初等中等教育学

メッセージ

「学ぶ」ってどういうことでしょうか? 受験期には、知識を無理やり詰め込む苦しい試練にも思えるのかもしれません。 しかし本来、「学ぶ」って素晴らしいことなのです。 「学ぶ」と は、単に知識の量を増やすことではなく、それまで漠然とみていた世界の解像度を上げてはっきりと"認識"して、その"理(ことわり)を知る"ことです。 「学ぶ」ことで世界は一変して豊かになります。 学習院大学文学部教育学科では、「学び方」や「教え方」の本質を学び、身につけることができます。ぜひご一緒に学びましょう。

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