「目」を正しく使えると、運動や勉強が克服できる?

運動や学習と目の関係
知能や体の発達に明らかな異常がないにもかかわらず、運動や勉強を極端に苦手とする「発達性協調運動障害」を抱える子どもたちがいます。こうした子どもたちは「感覚統合」といって、五感から脳に送られる情報を適切に整理・対応する力に問題が見られます。特に、五感からの情報の87%を占める視覚情報の処理、つまり「ものを正しく見る」ことを苦手としています。例えば、ボールとの距離感がつかめないためにキャッチボールができない、お手本と同じように踊れない、などがあります。勉強においても、文字を左右反対に書く、図形の読み取りが極端にできない、といった症状があり、ものを見る能力の不足に一因があると考えられます。
ビジョントレーニング
ものを見る力の改善に有効なのが、眼球の動きを鍛える「ビジョントレーニング」です。「脳の一部が露出している」といわれるほど、眼球と脳は密接に関わっています。プロ野球の世界では、ビジョントレーニングによってボールの軌道を目で追う力が増し、打率が大きく向上したという報告もあります。子ども向けには、2本のペンを交互に見る、ランダムに並んだ数字を順番に触る、あるいは目を閉じながら指でもう片方の指を順番に触る、などがあります。このような「追従性/跳躍性眼球運動」を繰り返し行うトレーニングが有効で、10年程続けることで一定の成果が期待できるといわれています。
体育嫌いをなくす
文部科学省が掲げる小学校の体育科教育の目標の中に、「適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てる」という一節があります。そのためには子どもの運動や体育に対する苦手意識を取り除いて、「楽しい」と思ってもらう必要があります。ビジョントレーニングや、子どもが楽しく続けられる方法・教材の開発は、子どもの「ものを見る力」を高めて、体育嫌いの克服、あるいはその先のスポーツや健康づくりへの前向きな取り組みを促すことにもつながるのです。
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太成学院大学人間学部 健康スポーツ学科 准教授吉井 英博 先生
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